小説

□同級生
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坂田の周りには、いつも何となく人が集まる。
男子が2、3人、女子が同じだけ集まって坂田に何か言っている。
キャーという笑い声と坂田のたるい声。落ち着く、声。


「何見てるんですか」
山崎がそっと声をかけた。
「人がいつも沢山いるなぁと思って」
ぼんやりとしたトーンで土方が答えると
「そうですねぇ。そういや、あの人が一人のとこ見た事無いや」
山崎が頷いた。
「人好きのする人なんでしょう。で、土方さんは何を?」
ひらひらと手元の手紙を見せられて山崎の顔が少し引きつった。
「またラブレターですか?」
「宛名しかない。差出人不明のものは開封しない主義だから中身は知らない」
「どうみてもラブレターですよ」
山崎は花柄の可愛らしい封筒に溜息をついた。
「どーするんですか」
「どーもしねぇ」
「まぁ、差出人がわからないんじゃねぇ」
言いながらきっと中身には名前が書いてあるだろうと山崎は予測する。でも、言ったりはしない。
突然、教室の隅の坂田銀時の席から歓声がする。土方が眩しいものでも見るように、目を細めているのが判る。
(気になるのかな…)
何か持て余し気味の自分の感情に蓋をして山崎は続ける。
「そういえば土方さん、この間付き合った女の人はどうしたんですか」
「別れた」
簡潔な一言。
「…またですか」
山崎はへたり込む。
「…実は沖田さんと賭けてたんですよ。今度はどのくらい続くのかって」
「へぇ?」
土方が大して面白くもなさそうに先を促す。
「一ヶ月持つかどうか」
「お前は?」
「俺が持つ、沖田さんが持たない、なんで俺の負けです」
「一ヶ月くらい経ってねぇか?」
「憶えててくださいよ。今日で25日目です」
「お前…凄ェな」
「賭けになりませんよ…」
俺の三千円…と山崎は呻いた。
「じゃあお前の勝ちにしてやる」
「え?」
「今日別れようと思ってた。まだ言ってない。あと一週間待ってやるから、沖田から金入ったら何かオゴレ」
「…土方さん」
ん?と土方はかわいい顔をした。
「何でも無いデス」
山崎は溜息を吐いた。

「土方さん」
「なんだ」
「帰りましょーか」
土方は頷いて立ち上がる。

教室から、坂田の席から、また歓声が聴こえた。


――――――――――


「坂田君、何見てるの?」
「…別に」
坂田は土方の出て行くところを目で追って、山崎を見てすぐ目を逸らした。
それから土方の席を見て、また目を逸らした。
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