リクエスト小説

□ソシアル
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「副長、お客様です…」
平隊士君が恐る恐る報告に来る。
「はいはーい」
「幕府のお偉いさんがウチに何の用でィ」
悪魔の申し子沖田君がどこからともなく現れる。
この子はウチの一番隊隊長でサディステック星の王子。特技は調教。
「さぁね、ゴリさんがナンかやらかしたのかもね。ゴリラだから」
「………あの、筒抜けなんだけどなぁ」
あ、居たの?
泣きそうになっているゴリさんは俺たちの上司で、局長で、ストーカーでゴリラだ。
隊士の信頼も厚くて、ふらふらしてた俺をスカウトした気の良い男で、ゴリラだ。
「いや、ゴリラじゃないからね」
「近藤さん、お客はいいんで?」
「おおそうだ、さすが総悟。いやなんか副長と隊長格にも挨拶したいと仰ってな。ありがたい事だから皆呼んでこようと思ってな」
ガハハハハ、って笑ってんな、ボンクラなゴリラ。
そんな奴いっつもじゃん。いい加減おかしいって思えよ。
「じゃー行こっか。総一郎君」
「そうですねェ、旦那」
「あれトシは?」
「土方君は腹痛で」
「土方さんは腰痛で」
黙れゴリラ。
「……いや、だからゴリラじゃないって…」
ゴリラをシカトしてすたすた歩きながら沖田君はどす黒いオーラを撒き散らしている。
怯えながら隊士君が障子を開ける。
いやーなカンジのお偉いさんが上座で愛想笑い。
にこにこ笑って俺達はお客のご尊顔を拝謁させていただく。
次に合った時は容赦しない為に。
「おや、もうお一方の副長様は…」
やらしい顔のオッサン。眼がそわそわしてやがるのがムカつく。
「あいにく席を外しておりまーす」
お前になんか会わせるかボケ。
こういう不届きモノがごろごろいるので困る。

ウチには俺と同じ副長職がもう一人居る。
門外不出としておきたいがそうもいかないので紹介しよう。
特別だよ?
丁度廊下から歩いてきた。
「来客があったのか」
トシ。土方十四郎。俺の天使で恋人で女神でお嫁さん(予定)で、やっぱ天使だ。
あ、でウチの副長ね。
「ぎんとき?」
鈴の鳴るような声。
「あーうん」
「来客は把握しておきてェんだ。きちんと報告しろ」
はい、判りました。
仕事熱心で頭が良い。通称、鬼の副長。
隊士のマドンナ。
俺の女神。
「じゃあ、二人きりで報告を…」
そっと掴みかけた手はどすん!という衝撃と鈍い音に寸断され、吹っ飛んだ俺はそのまま地面に沈みかけた。
トシの前でそんな無様な姿は晒せないから根性で踏みとどまる。
自慢じゃないが俺を吹っ飛ばせる人間はそういない。
飛び掛ってきた物体はそのまま目の前の土方君に抱き付く。
さっきと違ってぽすん、て可愛い音。おい!
「トシちゃん、もう終わるヨロシ」
「んでだ?」
「オヤツの時間ネ」
「…もう三時か」
甘い。俺のハニーは女子どもにハチミツより甘い。
俺を吹っ飛ばしたヤツは神楽。
俺が拾った子どもで、屯所に住まわせている。
おだんご頭の夜兎って天人で、怪力で大食い。
天敵は沖田君。
「あれ食べたいネ!あれ!」
「おいおい、あれじゃ判らねェよ」
「昨日一緒にテレビで見たネ。あのキラキラしてるやつ。バラとピスタチオ…」
「…マカロンか?」
「それ!」
「屯所にはねェな……、買いに行くか?」
「銀さんも行きたい!」
「アホ、副長が二人とも不在でどうする。ちゃんと買ってきてやるから」
土方君はそう言ってジミーを呼ぶ。
「おーい山崎、車出してくれ」
「はいよ」
影のように出現した(最初から居たらしい)ジミーがささっと愛しの土方君を連れて行く。
「やだ、ズルイ!銀さんもデートしたい!!!」
「銀ちゃん、うらやましいアルね?」
はい!とてもとても羨ましいです。
大人気なく叫びそうです。
「…神楽」
なに?って神楽が見上げる。
「ジミーから目を離すなよ」
「嫉妬深い男はイヤだってトシちゃん言ってたヨ」
「え!マジ?いや、コレ嫉妬とかじゃないから。違うから。ホント、ボディーガードの依頼だからさ、マジで…だってあれ、ほら…」
生温い目で見られた。ちょ、いつ覚えたのそんな顔。銀さん教えてないよ!
「だってさ、ほらアイツ超無防備じゃん。副長があんなんじゃマズいわけだよ。心配してるの、判るでしょ神楽ちゃん?」
また白い目で見られた。絶対沖田君の悪影響…ううう。
神楽ちゃんがどんどん悪い子になっていくよ……
「お、坂田。何だー、お前外に行きたかったのか。そーかそーか。何なら俺と見回り行くか?」
ノー天気なゴリラが言う。
「……黙れゴリラ」
「ええええぇ…」
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