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□そうなることが怖くて・・・ だからそうならない様に―――
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「そうかそうか。 悪ぃな、邪魔して・・・。」
そう言って、例の銀色をした男は今まで座っていた所を高い位地から見下ろす形になり、立ち上がる。
「・・・・」
その変化に土方は何も言わず、何も動かず・・・。
「じゃ、邪魔者はせっせと退散しますよーーっとぉ」
と背中を見せる姿となり、その男らしく、気の抜けた声で、右手をヒラヒラさせ、余った片方の手で襖を音を立てず開ける。
それも、その男なりの小さな気遣いなのだろう。
――――――――ドクンッ
不意に先程の一瞬の夢が脳を過ぎる。
まるで早送りでもしたかのように一瞬の出来事だった。
「待てっ! 万事ゃっ!!」
と、我にでも返ったと思えば、正夢かの様にアイツの事を呼び、手を伸ばした。
しかし、その伸ばした夢は意味を持たぬものとなった。
何故ならば、時既に遅し、襖が静かに閉められた直後だった。
「う、そ・・・・だろ?」
有り得ない、と言うような表情で硬直する土方。
自分の脳内で、朝、勝手に入り込んできた夢を現実と重ねているのだろう。