×土な話

□『と』もかく、滑り出しとしては結構良い方だろう
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最初はな、超クールな奴だと思ってた訳だ。
周りには常に人が居るくせに、見向きもしねぇしな。嫉妬があった気がする。
でも何時の間にかこう、恋的な物になってた。
男相手に…なんてどうでも良いほど見てたから、
その意味に気付いてからは近くに行こうと必死で、必要の無い単位とか取りまくって、今日はじめて隣の席に座った。

そんで、
「悪ぃんだけど、ちょっと教科書見せてくんね?」

大学2回の夏。
初恋の一歩を踏み出した。




『ともかく、滑り出しとしては結構良い方だろう』




外は多分、暑いんだ。
クーラーのきいた教室でタラタラと汗を流しながら見当はずれな事を思う。

教授か助教授か知らないオヤジが、ホワイトボードに書いた意味もわかんねぇ羅列を写しながら横に目を向ける。

距離にすると約30cm。
目線の先には恋焦がれた相手が居た。

名前は土方十四郎。
よく一緒に行動している近藤っつうゴリラのような男が『トシ』と呼んだのを聞いた時から、俺の心の中では『トシ君』と勝手に呼んでる。

トシ君は俺の事を知らないだろうし、話したのも今日がはじめてなのだが。
その癖、トシ君データ張なんて物には好きな食べ物から交友関係、アパート、自宅の場所とか、完全モーラだ。

…恋というのは人間の本性を暴いてしまう恐ろしいもんなんだ。きっと。

一つ弁解だが、今まで付き合ってきた女にここまで変質者的な事をしてきたわけではない。
自他共に認める淡白な人間だった。

今の俺を連れが見たら、大口を開けたまま言葉すらでないだろう。

見てみたいような、見たくないような…
見せてあいつらがトシ君に惚れたらヤバイので止めておこうと思う。
…恥ずかしいとは思わないあたり、もう末期。

あぁあでも、
だってな、この世に者と思えないくらい綺麗なんだ!
黒くツヤツヤした髪の毛とか、すらっと長い手足とか、小さい顔とか、涼しく通った鼻とか、真っ白い肌とか、意志の強そうな金色の目とか、…


「…おい」

「…」

「…おい、授業終わった」

「……」

「おい、?……坂田?」

「…へっ?」

今さ、薄くて紅い唇がさ、俺の名前を呼んだじゃん?
トントンと自分の名前を書いた提出用のルーズリームを指で叩かれて意識が戻る。
爪の形も可愛くて、指なんて女みたいに細くて長かった。
新たな発見は、瞬時に脳の中に書き込んだ。


「授業終わったんだけど」
「あ、あぁ…」

授業はありえないくらい短く感じて。なんかここで分かれんのが勿体ないから。

「…土方…君?次授業とか無かったらご飯食べにいかね?」

ちょっと、お誘いとかかけてみる。


「別にいいけど」


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大学パロ

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