×土な話
□アナタの缶詰
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片目の気が狂ったテロリストとやり合って、
刀を交差させた時に、どうやってか知らないが尖った針で片目を突かれた。
よりによってそいつと同じ方の目玉。
一気にブラックアウト。
別段惜しむような目でもなかったが、
最後の瞬間に映った奴の顔が酷く嬉しそうでイライラする。
「お揃いだな」
嘲り笑った声が鼓膜を揺らして、いっそのことその針で腰に来る声を届ける鼓膜
まで突いてくれ。
そぅ脳味噌で叫びながらぶっ倒れた。
<<アナタの缶詰>>
「…その目…」
この一ヶ月同じ事を永遠と問われた訳で、
そろそろ血管が切れそうになるのを抑えて問う。
お前もかよ、正直少し泣きそうになった。
「なんだよ」
「すごく残念」
グルグルに包帯を巻かれた、瞳があっただろう場所を撫でながら呟いた。
よく知る少女。
「義眼入れるしな、平気だ」
不思議に思うのは、持ち主よりも他人の方がこの目玉を必要としてたって事だ。
目が醒めた瞬間、見えない視界よりも、奴への苛立ちで包帯をむしり取った俺を
泣き腫らした顔で宥める近藤。
顔にできた凹みを無表情になぞる沖田。
眉を寄せて見つめる山崎。
あぁなんて幸せな目玉だ。
俺を構成する奴らが俺を見る度に失くなった片目を惜しむんだから。
それが永遠、何度も繰り返されるんだから。
「もぅ失えもんだからしょうがねぇだろ」
コレも何度言った事か…
しかし繰り返しだからもぅほとほと飽きた。
「すぐ新しい目玉入れる」
そう言うと、皆異物を嫌うように見えないなら必要ないと言いやがる。
「トシちゃんに…新しい目…?」
眉を寄せ、少し考えるように包帯を凝視する少女。
否定の言葉を受ける準備をしながら視線を返した。
「なら…私と同じ色にするネ」
「…何言ってんのお前」
驚き残った片目をひんむけば、悪戯が成功したみたいな顔で少女が微笑んだ。
「私の目あげたいヨ。だけどトシちゃんにあげなかった方が嫉妬するから無理ネ
」
「意味わかんねぇ」
「銀ちゃんもヅラもすっごぃ残念がってたけど、ないならしょうがないヨ」
ウフフと似合わない艶を含んだ笑いを称え、窪んだ片方を突く白い指の少女。
「無いなら私のを入れて欲しい。そしたらトシちゃん私のでしょ?たくさん失くな
ったらたくさん私の入れて?」
「そしたら…まるで俺はお前を仕舞う缶詰だな」
「次はきっと肺ヨ」
一ヶ月ぶりに楽しくなって、声を上げて笑った
「なぁ土方、お前何で違う色の目玉を入れた?」
せっかくお揃いだったのにとどこかふて腐れた様に笑うキチガイにおれは言う。
「惚れた女の目玉を入れたんだ」
幸せな、幸せな色をした作り物パッケージ。
あぁなんて幸せな缶詰