風船葛
□第一話
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『たいちょ。今日の書類終わったんで、帰ってもいいですか?』
そんな明るい声が響いているここは 十番隊 隊長室。
声の持ち主は、風花 空、十番隊の四席だ。
「"たいちょ"じゃねぇ、"隊長"だ。……帰っていいと言いたいところだが…………」
歯切れの悪い返答をしたのは、"たいちょ"こと、十番隊 隊長 日番谷獅郎である。
日番谷は、溜め息をついてから、先ほど切った言葉を続けた。
「悪いが、あの松本の手伝いを頼みたい」
あの松本と言いながら、日番谷が指差したのは、執務机に突っ伏してる副隊長の乱菊だった。
『了解しました』
空は、日番谷にそう返事をすると、クルリと向きを変え、乱菊の方へと歩みを進めた。
『随分と溜めたね、乱ちゃん。あたしも手伝うから、もう少し一緒に頑張ろ?』
立場上、乱菊が上司に当たるにも関らず、素晴らしくフレンドリーに話しかける空。
「本当!?空が手伝ってくれるなら、百人……いや、千人力ね♪」
ガバッという音が聞こえてきそうな程、勢い良く顔を上げる乱菊。
咎めないあたり、乱菊の了承の上とうかがえる。
話から察するに空は、書類捌きがうまいようだ。
『ねぇ、乱ちゃん。書類片付いたら、たいちょも誘って、甘味処行こっ』
「そうね♪なら早くはじめなくいとね」
そんなこんなで溜め込んだ書類を捌き始める二人がいるころ…………