風船葛

□第零話
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今から遡ること150年余りのこと。


総隊長こと山本の前に、とある二人の隊員がいた。


山「今日をもって零番隊を解散とする」


それは二人の隊員に大きな衝撃を与えた。


重い沈黙が三人の間に流れる。


『……四十六室の決定ですか』


片方が口を開いた。


山「そうじゃ。あの件から半年。もう危険はないという四十六室の判断じゃ」


『…………行くよ、空』


解散を言い渡され、項垂れているもう一人の隊員を呼ぶ。


『……あたし達の家が零番隊じゃないの?……ねぇ……奏』


空は弱々しくそう零す。


『空…………山じぃを困らせちゃダメだって言ったよね?』


『奏はこうなることを知ってたからそう言ったの?』


『……それは違う。空、ここに居ても辛いだけだから』


空の傷を深くしないためにもと奏は先に戻るよう促す。


『…………わかった……』


その意図を汲み取った空は、ふらふらとした足取りで部屋を去っていった。


再び沈黙が流れる。


口火を切ったのは奏。


『半年も引き留めていたのに突然の解散とは酷いことをするのですね、四十六室は』


空に向けていた声とは全く異なった奏の冷たい声。


山「……不憫を許してくれ」


『予めお伝えいただきたいという苦情を言ってるのです』


山「……伝えよう」


さらりと総隊長に苦情を突きつけた奏。


『隊舎はどうか残しておいていただきたい。無くなったと知れば空が壊れてしまう。』


願う奏の声は酷く切なかった。


山「そうしよう、あの子を壊すことはお主を壊すことになるじゃろう」


『感謝します』


深く頭を下げる奏。


『本当は気付いてました。解散されてしまうであろうということに』


頭を下げたまま奏は続ける。


『もう、流魂街に家を借りました。必要であれば彼らを飛ばしてください』


山「あぁ、そうしよう」


彼らというのが零番隊で飼われている梟や隼だと理解し、山本は頷いた。


暫しの間の後、申し訳ありませんが…そう奏が口を開く。


『" 我ら零番隊は尸魂界のために " 改め、" 我ら零番隊は零番隊のために "』


それだけ言い、一礼すると奏は瞬歩で部屋を去った。





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