イルゲネス

不在の日
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 朝食をひとりで摂っていると、クルダップが現れた。
「あれ? 今日はジェイクと一緒じゃないのか?」
「……ああ。実家に帰ってるんだ」
 朝食を摂り始めてからまだほんの僅かな時間しか経っていないというのに、この質問はいったい何度目だろうか。
 そんなに自分はジェイクと一緒にいるものだ、という印象が強いのか。
 そう思うと、何とも言えない複雑な気分になる。
 その思いが顔に出たのか、クルダップが首を傾げた。
「どうかしたか、フォン?」
「いや…」
 何でもない。そう言おうとした時、頭の上から低い声が降ってきた。

「今朝はジェイクィズと一緒ではないんだな、フォーティンブラス」
 見上げると、そこには食事を持ったニコラスが立っていて……フォンは小さく溜め息をつきながら、同じ説明を繰り返した。





 ジェイクがいないと聞いたクルダップとニコラスはそれぞれ、遊びに行かないか。共に勉強をしないか。と、フォンを誘う。
 それぞれ魅力的な誘いだとは思うが、何だか気乗りのしないフォンは、読みたい本があるから。と、ふたりの誘いを断った。
「すまない、ふたりとも、また別の機会に誘ってくれ」
「気にするな」
「そうそう。次、楽しみにしてるからな」
 相変わらずの無表情と、能天気そうな笑顔に見送られ、フォンはひとり寮へと戻る。
 その足取りは重かった。


 
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