イルゲネス
□V
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「俺の想いが、信用出来ないんだな…」
フォンは確認するように聞いた。
ジェイクはわかっていない。自分がどれほど狂おしく、彼を求めているかを。
「信用するとかしないとかって問題じゃない。
もう一度お前の中で、それが“恋”なのかどうか、考えてみてくれって言いたいんだ」
間違いを犯してからじゃ遅い。そう説き伏せるジェイクに、フォンは瞳を細める。
ジェイクは優しい。
だからこそ、フォンの覚悟が理解出来ないのだ。
「ジェイク。俺は始めに言っただろ。
お前の事を、家族のように思ってる。大切な友人だと思ってる。
そして、恋しいと……」
たとえジェイクにだって、この感情を否定させはしない。
この想いは、フォンだけのものなのだから。
「フォン……」
フォンはジェイクの肩を押し、そっと身を離した。
「ジェイク。お前が優しいのは知ってる。
家族ごっこも、恋人ごっこも、俺は嬉しかった」
フォンはかたい表情のまま言葉をつむぐ。
「だけど、俺はお前が思うよりずっと強欲なんだよ…」
一度吐息をつくと、孔雀瞳を伏せた。
「……もういいんだ。やめよう、ジェイク。
これ以上、恋人の真似事はやめよう。でないと──」
本当に、勘違いしてしまう。そう、苦く言い放つフォンに、ジェイクは腕を伸ばす。
「フォン。俺は──」
「俺の事を思って、こんな茶番劇に付き合ってくれた事には礼を言う。
だけど、最後まで演じてくれないなら、最初から半端な事はしないでくれ」
ジェイクの腕をすりぬけ、フォンはベッドを降りた。
「おやすみ、ジェイク。
明日からは、また以前と同じただの友達に戻ろう」
フォンはもう一度、おやすみ。と呟くと、ジェイクに背を向けて、頭までシーツを被ってしまった。
「フォン…」
ジェイクは何か言おうと、口を開いた。
だが、言葉は見付からない。
慰め。言い訳。謝罪。
どれも全て、フォンを傷付けるものでしかないからだ。
ジェイクは自分の言葉の愚かさに気付きながらも、その愚かさを否定する言葉すら見付けられずにいた。
双方眠れぬまま、月の眩い夜は過ぎていった。
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