イルゲネス

V
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「俺の想いが、信用出来ないんだな…」
 フォンは確認するように聞いた。
 ジェイクはわかっていない。自分がどれほど狂おしく、彼を求めているかを。

「信用するとかしないとかって問題じゃない。
 もう一度お前の中で、それが“恋”なのかどうか、考えてみてくれって言いたいんだ」
 間違いを犯してからじゃ遅い。そう説き伏せるジェイクに、フォンは瞳を細める。
 ジェイクは優しい。
 だからこそ、フォンの覚悟が理解出来ないのだ。



「ジェイク。俺は始めに言っただろ。
 お前の事を、家族のように思ってる。大切な友人だと思ってる。
 そして、恋しいと……」
 たとえジェイクにだって、この感情を否定させはしない。
 この想いは、フォンだけのものなのだから。

「フォン……」
 フォンはジェイクの肩を押し、そっと身を離した。
「ジェイク。お前が優しいのは知ってる。
 家族ごっこも、恋人ごっこも、俺は嬉しかった」
 フォンはかたい表情のまま言葉をつむぐ。
「だけど、俺はお前が思うよりずっと強欲なんだよ…」
 一度吐息をつくと、孔雀瞳を伏せた。
「……もういいんだ。やめよう、ジェイク。
 これ以上、恋人の真似事はやめよう。でないと──」
 本当に、勘違いしてしまう。そう、苦く言い放つフォンに、ジェイクは腕を伸ばす。

「フォン。俺は──」
「俺の事を思って、こんな茶番劇に付き合ってくれた事には礼を言う。
 だけど、最後まで演じてくれないなら、最初から半端な事はしないでくれ」
 ジェイクの腕をすりぬけ、フォンはベッドを降りた。
「おやすみ、ジェイク。
 明日からは、また以前と同じただの友達に戻ろう」
 フォンはもう一度、おやすみ。と呟くと、ジェイクに背を向けて、頭までシーツを被ってしまった。



「フォン…」
 ジェイクは何か言おうと、口を開いた。
 だが、言葉は見付からない。
 慰め。言い訳。謝罪。
 どれも全て、フォンを傷付けるものでしかないからだ。

 ジェイクは自分の言葉の愚かさに気付きながらも、その愚かさを否定する言葉すら見付けられずにいた。



 双方眠れぬまま、月の眩い夜は過ぎていった。





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