イルゲネス
□愛夜
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ジェイクは自分よりいくらか細い体を、広い寝台に縫い付けた。
ふたり分の体重に抗議するようにベッドは軋んだが、気にはならない。
だが──
「フォン、いいのか…?」
本来なら、部下が上官を組み敷くなど許されない。
これが他の男だったなら、恐らくその場で射殺されている。
だが、フォンはそれを許していた。
一度は銃を向けたジェイクに己の本心を見せる事はしないくせに、自らの体を好きにする事は認めたのだ。
そこにどんな思惑があるのかはわからない。
けれど、ジェイクはその誘いにのった。
フォンに触れたかった。
今、すぐそこにいる彼が、かつて自分が愛した少年と同じである事を、この手で触れて確認したかった。
いつもきちんと締めてあるネクタイをほどき、ゆっくりと首に舌を這わせる。
筋にそって舌を動かせると、くすぐったいのか微かに身動いだ。
そのまま逃れようとする体を押さえ付けて歯を立てると、小さく体が跳ねる。
強く噛みすぎたかと、その痛みを慰めるように、同じ箇所をなめれば、くぐもった呻きが聞こえる。
こうやって声を殺す所は昔と変わらないな。と、心の隅で思った。
「相変わらず、色白いな…」
ボタンをすべて外し、開いたシャツの下から現れたのは滑らかな肌だった。
パージ・チルドレンが有する驚異的な治癒能力のおかげか、以前ジェイクを庇った際に負った傷は、痕すら残っていない。
その事に安堵しながら、ジェイクはフォンの肌を撫でさすった。
自分の記憶と違う所は無いか。どこかに、致命的な傷などを隠していないか。
ジェイクはフォンの頭から足の先まで、何度も何度も視線を往復させる。
それがあまりにもしつこかったからか、フォンは顔を反らした。背けた目元が微かに赤らんでいる事に気付いて、ジェイクは小さく笑った。
女とは違う、平らな胸から腹にかけて舌を這わす。
白い肌に、唾液の軌跡が煌めいた。
「ぅっ……んっ」
押し殺したあえぎが漏れ聞こえてくる。
フォンは昔から、肌に触れられる事が苦手だった。
他人と距離を置く事に慣れてしまった若き日の彼は、これほどまでに濃密な触れ合いに慣れていなかったのだ。
だが、体を重ねる毎に、フォンは少しずつジェイクに触れられる事に慣れていった。
熱のこもった愛撫に、快楽を示すようになった。
ジェイクは腹まで舌を這わすと、臍の周りをひとなめしてから、そこにくちづける。
「ぅあっ…!」
うっすら赤い痕が残るのと同時に、フォンの唇から悲鳴のような声が上がった。