イルゲネス

夜情
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 何も考えずに、ただジェイクにすべてを任せてしまえばいい。
 多分、ジェイクはフォンを傷付けたりしない。
 そう思いながらも、フォンは頑なに己の心を押さえ付けようとしていた。
 ジェイクがレイのために、自分の元にやってきたのではという疑惑のせいだけではない。
 心を許してしまえば、彼にすがり付いてしまう気がした。
 この五年間、自分が考え続けてきた計画すら彼に話してしまいそうな気がした。
 それほどまでに、フォンは全身全霊でジェイクを求めていた。
 愛しいと、愛しているのだと、喉が張り裂ける程叫びたいくらいに。



「んっ、あぁっ」
 五年間、一度も他者に触れられた事の無い箇所に、ジェイクの長い指が触れる。
 固く閉ざされたそこに、少しずつ時間を掛けて指が入り込んでいく。
 僅かな痛みと生理的な嫌悪に涙をこぼすと、ジェイクの唇がそれを拭った。
 昔と変わらない慈愛の仕草に、また涙があふれる。
 ゆっくりと指を動かしながら、ジェイクは何度も何ヵ所も、くちづけを降らす。
 言葉の代わりに与えられるくちづけは、ただただ優しかった。



「最後まではしないから安心しろよ」
 やっと指の圧迫感に慣れた頃、ジェイクはフォンの耳にそう囁き込んだ。
 濡れて霞む視界に写り込むジェイクの顔には、昔見せたフォンを安心させる笑みが浮かんでいる。
「流石に五年ぶりだからな。これ以上は無理だろ」
 そう言いながらも、フォンの胎の中でジェイクの指は、何かを探るように蠢く。

「ジェ…イク……」
「繋がらなくても、ふたりでよくなる方法はあるさ」
 そう言うのと同時に、ジェイクは己の唇でフォンの言葉を封じると、指を深くに突き立てた。
「ふぅっ……ゃっ」
 くちづけの隙間から響く声は、喘声にも悲鳴にも聞こえる。
 フォン自身、それが痛みなのか快楽なのかわからなくなっていた。
 だが、それを与えるのがジェイクである以上、フォンはすべてを受け止める覚悟を持っていた。
 かつて、ジェイクがフォンのすべてを受け止めてくれた時のように──



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