イルゲネス U

永久に続く約束を
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 それは、とある休日の事である。





「おーい、フォン。何か荷物届いてるから取りに来いって、教官が行ってたぜ」
 昼食の最中。通りすがりのクラスメートがそんな事をフォンに告げた。

「荷物……誰からだ?」
「さぁ? そこまでは聞いてねえけど」
 ついひとつき程前、“病気療養”から復学したフォンはしばらく憂鬱な顔をしていたが、今はすっかり以前と同じ穏やかさを取り戻している。
 クラスメートも、そんなフォンだから気軽に伝言を伝えてきたのだろう。



「ジェイク、悪いが先に部屋に戻っててくれ」
「ああ、わかった。ついでに食器片付けておくから、行っていいぞ」
「すまない」
 すっかり綺麗になった皿をトレイごと手元に引き寄せるジェイクに礼を言い、フォンは立ち上がった。





 復学からしばらく……。ジェイクの実家に行き、疑似親の墓参りをしてから、フォンの心は落ち着いていた。
“フォン・フォーティンブラス”を形作るのが、遺伝子の設計図だけではないとわかったから。
 フォンを創るのはクルダップやニコラスといった友人達であり、エスのような同じ境遇の者であったり、ジャニスやアンドリューといった相容れない者であり――そして、慈しんでくれた両親やジェイクだ。

 どんなに完璧な設計図からつくろうと、それが生き物である以上、環境や出会いに左右されないわけがない。
 誰かがフォンを造るひとつのピースであるのと同じように、フォンもまた誰か――例えばジェイクを構成する一欠片なのだ。
 それを理解した今、フォンは自分を卑下したりはしない。“生まれ方”が大多数の者達と違うだけで、自分を不幸だなどと嘆く事はない。
 少なくとも、ジェイクを始めとした友人達は心からフォンを大切に思ってくれている。
 その一点だけ取り上げても、フォンは自分自身を誇れる事が出来た。



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