etc

我がしき
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「それでね。この前スクアーロが本部に来た時なんだけど、新人の人が間違えてスクアーロの事獄寺くんって呼んじゃってさ」
 報告でやってきた本部ドン・ボンゴレの執務室。
 幼い上司に無理やり付き合わされた世間話はそんな始まりであった。

「その人すっごい謝ってたんだけど、スクアーロキレちゃってね。山本と俺とふたりがかりで取り押さえたんだよ」
 これその時の傷なんだ。と頬に貼られた絆創膏を指差す。
 ザンザスは綱吉のいれたコーヒーを不味そうに飲みながら、ついでに殺っちまえばよかったものを、あのカスが。というような不穏な事を考えていた。……考えていたら、綱吉に苦笑いされた。最近とみに鋭くなったこのガキの超直感は面倒だと心底思う。

「ザンザスは獄寺くんとスクアーロって似てると思う?」
 このガキは俺に何を言わせたいのだと怪訝に思いながら、似てねえと言い放った。

「強いて言うなら、銀髪と目付きと口と態度の悪さ。頭は悪くねえくせに言動が馬鹿以外の何ものでもねえ事くらいだろ」
「……言いたい放題だね」
 コーヒーのせいではなく苦く笑う綱吉を一瞥し、ザンザスは立ち上がった。
 もうこれ以上こんな茶番に付き合っていられるかという思いは、確かに綱吉に伝わったらしい。綱吉は軽く手を上げて、ひらひらと振った。

「ねえ、ザンザス」
「あぁっ?」
 まだ何かあんのかと一瞬だけ振り返れば、にこりと笑って綱吉はひとこと言った。





「獄寺くんのほうがカッコいいよ」
「……知るか、クソガキ」

 俺はあのカスにそんなもん求めてねえんだよと残して、ザンザスは去っていく。

 あの頑固な男から惚気ひとつ聞き出すのも難しいなと、綱吉は再認識していた。





 2008.4.1

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