ギャングキング夢小説

□【Surprise…SWEET&SWEET】-驚くほど 甘く 甘く-
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そうして過ぎた日々はあまりにも一瞬だ。

今日か明日かと考えれば考えるほど、もっと傍に居ていたくなる。
そして日に日に募るジミーへの想いは欠片もなくなることはない。

今日もまた、つまらない授業を抜け出して屋上へと足を向ける。

いつもと違ったのは、どうにも言えない湧き上がる“嫌な予感”

今日は、止めておこうか…とも思った程。
それでもジミーたちに会いたい気持ちの方が数倍も上回る。

屋上へと踏み入れる足はもう慣れてしまっている。
コンクリートの硬さ、ここに吹き入ってくる風。
私の体はここ数ヶ月の間にすっかり慣れてしまった。

「おはよう、ジミー」
「おう」

私の声に反応して振り向いたジミーは何故だか屋上に一人でポツンと煙草を咥えていた。
そうしている間にもどんどんと沸き上がってくる嫌な予感はどうすることも出来なかった。

「一人なの?」
「アイツら便所行ってる」
「そっかー…」

ジミーの声をまた一つ胸に刻んで隣に座り込んだ。
本当ならば好きな人と二人きりであるこの瞬間を、死んでも良いくらいに幸せに思うはず。

私だって、例外ではないのだから少しばかりはその気持ちはある。
それでも先程から続く嫌な予感は消えることはなくて、むしろ今はそっちの方が上を行く。

風に身を任せよう。
時に身を任せよう。
どうか何事もありませんように。

こちらを盗み見るジミーには全く気づかずに、私は目を閉じて祈った。

「―…名無しさん」

囁かれた言葉。私の名前。

気を許してしまえば心臓は大いにに高鳴っていただろう。
必死に抑えた私の心を ジミーには見透かされそうで怖かった。

「何?」

暫くの沈黙の後、私はゆっくりとジミーに顔を向け返答した。
私を見つめる瞳は遠い。

こんなにも近いのに


とても遠い。









どうか  




どうか何も言わないで










「名無しさん…







あんまりここに 来ない方がいいんじゃねぇか…?」


































ヤメテ ヨ









「どうして…?」
「どうしてってお前…。名無しさんは俺たちと違って真面目だろ。普通科だけど、それでも成績とか落ちたらヤベェだろ…。こんなこと言いたかねェけど、最近名無しさんずっと俺たちと一緒にいるしよ、授業もサボってんだろ?休み時間にでも、来いよ…。待っててやるから―…」



ジミー

ジミーは何も分かってないよ



「やだ」
「やだってお前…」
「やだよ…ッ!」
「…名無しさん?」


ジミーはきっと今私に顔を向けているんでしょ。
私に瞳を向けているんでしょ…

お願い やめて

俯く私を覗き込むのはやめて。




涙だけは見られたくはない








「休み時間だけなんてッ…!
耐えられないよッ…。
ジミー達と出会って、もうあんな教室になんて居られないよッ…!ずっとずっと一緒に居たいのに…私が居ない間にもっと知らないこと知れるかもしんないのに…ッ。その時間が不安で不安で仕方ない…!本当はジミーが家で何してるかさえ気になるのに!!」


勢いに任せてとんでもないことを言ってることは分かってる。
これではまるでストーカーだし、仮にそう思われはしなくてもジミーを好きなことはチョンバレだ。

「名無しさん…」
「私は―………ッ」

どうしよう どうしたらいいんだろう

流れる涙。
頭の中は今までにないくらいグチャグチャだ。
今、失おうとしているこの時間をどうにか取り戻したくて、それでももがくことしか出来なくて、多大なる虚無感が襲い来る。

助けて 誰でもいい この場を流してしまって

そう祈ろうにも誰も来ないこの屋上には 私とジミーのたった二人だけ

「名無しさん、俺は…」
「ジミーは…ッ!」

もう何も言わせない 聞きたくないよ 



私なんて





私なんて   




どうせいらないんでしょ…?






「ジミーは…私なんて居なくてもいいんでしょう?ただ、髪が綺麗だったってだけだもんね…?あたしには、ジミーしかいないのに…」



そうだよ

ジミーしか  イナイノニ


「名無しさん…」

もう辛さも通り越してしまった

出会わなければ良かったとさえ思った

この髪さえなければ 私と貴方は出会うこともなかった

サヨウナラを言おう




気まずい雰囲気にとても居てられなくなり、私は屋上の扉を勢い良く開ける



「ジミー 大好きだったよ…



    サヨナラ」



その一言で全部が終わり















授業になんてとても出る気にならなくて、学校を早退した。

この時間。
いつもならジミーたちと一緒にいるハズなのに、私は一人。




一人だ。





ジミー、ジミーは私のことを心配してくれたんだよね。
その気持ちはスッゴクよく分かるよ。

でも今は一緒にいたかった。
今までの私の人生、何一つ笑えることなんてなかった。

そんな私の道を明るく照らしてくれるジミーたちに、私はものすごい嬉しかった。

どうにも出来ないほどの喪失感

もう、取り戻すことも出来なくなった

また私は 一人ぼっちだ



家の部屋でただ一人、耳に痛い程の静寂

私は何をするわけでもなく ボゥッとしているしかなかった


お母さんもお父さんも心配しない
私のことなんて心配してくれもしない

オカエリさえ言ってはくれない

だから だから ジミーだけだったのに…



そうだ、髪を切ろう。
貴方が綺麗だと言ったこの髪を。

そうすれば全て忘れられる気がする。


私はゆっくりと立ち上がって筆立てから鋏を抜き取った。







シャキ…





夢なら覚めて欲しいのに





シャキ…








これが夢でないことがひしひしと感じられる






シャキ…






痛いほどに胸を貫く






シャキ…








さよなら






シャキ…






サヨウナラ 何もかも








「名無しさん―!」

愛しい声はもう届かない

「名無しさんッ!」

これは幻聴なんだろうか…

「名無しさんッ!」

いや…違う…

「名無しさんッ!出て来いッって!」


…聞き間違えない ジミーの声だ…っ!






「ジミー…?」


部屋の窓を開ける




玄関の前には愛しい姿




何故? 何故いるの?


「名無しさんッ…!俺はそういうつもりで言ったんじゃねぇし、只お前が心配だっただけだっつの!お前がそういう風に思っててくれてたなんて知らなかったしよぉ!そんなにもっと…もっと俺と一緒に居たいんなら居ろよ!好きなだけ居たらいいじゃねぇかッ!」

私の姿を見つければ息を切らして叫ぶ貴方

溢れる涙なんて知ったこっちゃない


玄関まで駆け下りると、ジミーは汗だくだった


「ジミー…」
「おま…髪切ったのか?馬鹿なことしやがって…綺麗な髪だったのに…。なぁ名無しさん…俺はお前の人生を台無しにしたくなかっただけだ。お前がそんなに俺たちと居たいなら、ついてこいよ…」

「うッ…ヒック…」



ゆっくりと私の頭を撫でるジミーの手は


世界中の何よりも暖かい…




「つか…居ろ! 俺たちの傍にじゃなくて、俺の傍に居ろッ!!」

「―…え?」

顔を上げるとそこには顔を真っ赤にしたジミーがいて



「俺の女になりゃ、嫌でも俺と…休みの日でも一緒だろ」

「…いいの?」

「だから、命令だッ!俺の傍に居ろッて!」

「〜…! うんッ!!!」



私を抱きしめたジミーの腕は震えていた
余程必死に私を探し回ったんだろう

ごめんねジミー

「サヨナラなんて言ってゴメン」

「…キツい」

「え?」





「好きな女に“サヨナラ”言われんの、だいぶキツイ…」









ほんのり照れた貴方の表情  大好き



息を整えたジミーがゆっくりとぎこちなく私にしたキスは




“Surprise SWEET&SWEET”…



それは



“驚くほど 甘く 甘く”…




狂おしい程の 甘さ






END
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