ギャングキング夢小説
□【Surprise…SWEET&SWEET】-驚くほど 甘く 甘く-
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学校からの帰り道。それが君と初めて出逢った場所だった。
その時にはもう、薔薇十字に入って半年経っていたけど、私は一人だった。
高校生にもなっていつまでも子供な女子たちに、私の思考は理解できないらしい。
適当な相槌も、愛想笑いも、皆にバレてしまったみたい。
「冷たい子」「一匹狼」「ツンデレ」
様々な陰口を聞こえるように叩かれた。
私は特にイラ立つこともなく、ただひっそりと生活を続けるだけだった。
日に日に悪口はエスカレートしていったが、大々的なイジメには発展しなかった。
結局みんな口だけで、“問題児”になる勇気はない。
それが分かって余計に阿呆らしくなって、ついには目を合わせることも無くなった。
私は周りから見れば「孤独」で「寂しい子」だったのかもしれない。
だけど、あの日から、それも終わったんだよ。
「すんッッげぇぇぇぇ―――― 綺麗な髪ッ!!!」
私のすぐ後ろからその声は聞こえた。
自意識過剰かと思ったが、見渡しても私以外に人は居なくて、勢いで振り向いてしまった。
そこに居たのは同じ学校の最大問題児、ジミーとバンコ。
学科は違っても、彼らの噂はどれも震え上がるものばかりだった。
その二人は目をキラキラと輝かせて私を見つめていた。
その状況を理解した私は、軽く会釈だけをしてそそくさと帰ろうとしたけれど、ジミーとバンコは私の歩く速度合わせてついてくる。
いつまでも諦める素振りを見せない… 走ろうとすれば、二人も走ろうと構える。
終始瞳を輝かせて、彼らは微笑んでいた。
わたしは…引きつっていたと思う。
それでも二人を無視して足早に歩き続けて数分…私はハッとした。
もう、後二つ角を曲がれば家に着いてしまう。私の家は学校から歩いて約10分程しかなく、あっという間に着いてしまうのだ。この二人に家がバレてしまうのは、嫌だった。
歩くスピードを緩め、しばらく考えたけど良い案もなく、ため息を一つついて振り返った。
「何か、用ですか?」
きっと私の顔はすこぶる機嫌が悪そうだったと思う。
けれど二人は気にする素振りも見せなかった。
私のセリフに二人は声を合わせて「髪」と一言。
私はすぐに「は?」とまぁ素っ頓狂な声をあげてしまった…だってあんなに喧嘩が強い恐ろしい奴らと噂されているこの二人が、たかだか髪の一つや二つにこんな瞳を輝かせて追ってくる?普通……
私のヤ○キーのイメージが、煙草吸って無免でバイクや車を乗り回して、女の子手当たり次第に引っ掛けて…っていうものだったせいか、酷く驚いた。
「お前、同じ学校だよな?見たことネェなー」
「スッゲェ、サラツヤ…テレビに出れそうだな」
「何年?あ、もしかして先輩ッスか?」
「いくらのトリートメント使ってんの?どのメーカー?」
次々とバラバラの質問が飛んできてあたふたとしてしまう。
二人と私の会話は全くと言っていいほどに噛み合ってはいない。
暫く目を丸くして聞いていると、ジミーが前へ乗り出し「一年か?」と聞いてきた。
私は強張った体をそのままに、上手く回転しない頭だけで頷き、返事をした。
「同い年か〜、名前は?」
「名無しさん…名無しさん名無しさん…」
暫くの沈黙の後、バンコが「シャンプー、何使ってる?」と横入りしてきた。
私は、アッ…と小さく洩らして商品名だけを告げる。
ジミーは「ホー」と言いつつ、バンコは「あぁー」と言う。
この時ばかりは、頭がもう一つ欲しいと本気で思ったものだ…
「俺、ジミー。こいつはバンコ」
ニコニコと、自分と相手とを指差しながら自己紹介するジミーに、私は内心「知ってるよ」と思ったが、素直にペコリとお辞儀をしておく。
それからと言うもの、二人は学校で見かける度に私に声をかけるようになった。
始めの頃は、髪やトリートメント、はたまたボディシャンプーや洗顔料の話だったのが日が経つにつれ自然と話題も友人として変わらない、他愛のない話になっていった。
しまいには工業科の仲間、サイコやゾンビくん、ヒロシやトールなども引き連れて私のクラスにまで来るようになっていった。
当然、同じクラスの連中は大いにビビリ、前より一層私を避けるようになったが、それでも皆と一緒にいて、楽しくない日はなかった。
そして私は恋をした。
ジミー…あんたにだよ。
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