ギャングキング夢小説

□【目の前にあるもの】
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「板東くん!」

それから私はよく、板東くんに話し掛けるようになった。


「あ、名無しさんちゃん!」
「ち―ッす」


板東くんの隣にはジミーくん。(やっと普通に呼べるようになった)
そしてゾンビ。


いつも通りの光景


「アタシ最近、板東くんの好きなあのバンド聞き始めたんだぁ♪」

「そうなんスか?」

「ほぇ〜」

「お前ソレで株揚げようとか考えてんじゃね―だろうな?」

「何よその言い方は!!」

「あッはは!」


他愛もない話に

ゾンビのちゃちゃ入れ。


大好きな板東くんが側に居るってだけですごく幸せで



毎日、放課後や休み時間にお互いを見つければ話す…
そんなことの繰り返しだけど、私には大切な時間

ゾンビが作ってくれた

大事な時間だった





告白なんて頭になかったけど…
どうしても、やっぱり欲が出て、板東くんが欲しいと思ってしまう。

日に日に募る…




「板東く―ん!」

「名無しさんちゃん!」

「ちぃ―ッす」

「今日、サイコくんとキャンディくんは?」

「あいつら今日塾とギターの弦変えに行ったからさ」

「そうなんだぁ」



私の言葉に板東くんが返してくれる


幸せ




「ねぇ…今日板東くん借りていいかなぁ?」

「え?」

「あぁ、俺は別にいいッすよ」

笑顔で答えるジミーくんの横で、少し戸惑った板東くん

嫌だったかな…


「あ…駄目かな?」

「いや、駄目っつか…いいんすか俺で」



・・・え?



「バンコ!名無しさんちゃんの誘いだぜ?行っとけ」


ナイス後押し☆



「あ、じゃあ…」

「板東くん、敬語いらないからね?」

「は…うん。ははは」


なんだか気乗りしない感じ?

やば、泣きそう…





「んじゃあ俺はここで」


そう言ってジミーくんは笑顔で手を振って去っていった


「…」

「…」


2人きりになった私たちは、しばらく何も話さなかった


折角の2人きりのチャンスなのよ?

邪魔なゾンビの野郎もいないのよ…?










…………ゾンビ?







そうだ…

今日は一回もゾンビ見てないじゃない!!

も―!
だから調子も狂っちゃうんじゃない!!



ッたくあの血頭―……



………











…ン?





なんだってアイツが…?



何でアイツが頭に出てくンのよ…



いや、そりゃ毎日来てンのに今日に限って来ないのは確かに調子乗らないケド…




でも…




板東くんが隣に居るのに…?









「あの…名無しさんちゃん」

「え!?あ、何??」




少しキョドった。

ゾンビが変なコト考えさせるから…



でも何か…


気になる






「俺…すんません、何話せばいいのか…」

「いや!いいのよ??つか誘っといて本人が無言ッてど―よって感じだし…」

「いや、嬉しかったです」

「…へ?」

「俺名無しさんちゃんのこと好きですから…」

「……!?」


突然の告白…
と取ってもいいんだよね?
コレは…



「へッ?あの、板東く…」

「いいんす、俺、名無しさんちゃんが俺のこと好きじゃね―の知ってるし」

「え!?違ッ―…」





《違う》




言わなきゃなのに


出ないッ…










出せないよ…


どうしても

どうしても



頭の中には










ゾンビばっかり―…











「ごめん板東くン…!」

「いや…いいっスよ」

「あたし板東くんのこと…ッ!好きだったのに…何でかアイツが…!ゾンビばっか考えちゃッ…!!」




涙が出る



止めて…ッ



大好きな板東くんからの告白なのにッ…!

なんだってアイツが………






「分かってますよ」

「ッ…え?」

「俺分かってました」

「…板東く…」

「いつもゾンビくんと、言い合いながら仲良くしてたし…見る目違ってたし…」

「…ッ。でもアタシ、ずっと板東くんのこと…」

「…憧れだったんじゃないっすかね」

「憧れ…?」

「ゾンビくんが居るけど…俺ッてゆう存在を何かしら憧れちまって、それを好きって勘違いしちゃって、本当の気持ちに気付けなかった」

「…」






ゾンビへの気持ちに




「ごめんね…」

「いいっすよ、俺も、これからは憧れでいますから」




ニコリと笑って板東くんは私に軽くお辞儀した


「ゾンビくんも、俺と華菜子ちゃんが知り合う前から相当悩んでましたよ」

「ゾンビが?」

「《好きな女が俺のダチを好きらしい》ッて」

「……ッ」

「すぐに、その《女》ッてのが名無しさんちゃんだって気付いたし、ゾンビくんも名無しさんちゃんもすれ違ってんだって分かりましたよ」

「そッ…か…」

「だから、安心して本当に好きな人ンとこ、行ってくださいよ」


ニコリとまた笑う

どうしても
このかわいらしい笑顔と

あのゾンビの小憎たらしい笑い顔と重なる

「ごめんね」



もう何度言ったか分からない

《ごめン》って

大好きだった

愛してた


そのハズだったのにな…



「じゃあ、俺はココで」




笑顔で小さく会釈して
板東くんは帰って行った










その後で板東くんが
泣いてたって
偶然板東くんを見た友達に聞いた



ごめんね


板東くんを好きだって気持ちはきっと勘違いなんかじゃなかった

でもそれ以上に

ゾンビのコトが―…










空はもう 暗い







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