ギャングキング夢小説
□【Genuine Article】 -本物-
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「お邪魔しま〜す…」
ガラッと音を立てながら開いたその扉は、今俺たちがいる教室 云わば溜まり場だ
そこからひょっこりと顔を出す少女は…名無しさん。
来ることが分かってはいたけど、顔を見ると緊張する…思わず顔が強張った。
「名無しさん」
「お兄ちゃん」
名前を呼ばれた名無しさんちゃんが嬉しそうに愛らしい笑顔で近付く先は俺が惚れた男、ピンコさんだ。
名無しさんちゃんはピンコさんの妹であり このボタ高の数少ない女子生徒でもある。
俺はそんな名無しさんちゃんに想いを寄せて、いつも遠くから見つめることしか出来ないでいる。
この気持ちがピンコさんに知れたらどうなるのか…。
無口、無表情の裏にはやはり妹に対する愛はあって、名無しさんちゃんがこの学校に入学する時も周りのガラの悪い奴らに「名無しさんに手ェ出したら殺す」と初っ端から全員に脅しをかけに行ったほど。
それでも名無しさんちゃんの持ち前の明るさからか、友達は自然と出来たようで今では人見知りであれ友人はいるらしい。
その中に、俺は入っちゃいない…
俺が名無しさんちゃんの存在を初めて知ったのは、お互いに入学して間もない頃だった。
新しく出来たのであろう友人たちと、照れながらも楽しそうに廊下を歩く彼女とすれ違っただけだった。
一瞬…本当に僅かな時間、目が合っただけだった。だけどそれは俺にとっては数分にも感じられて、気付けば心臓が痛いくらいに高鳴っていた。惚れてしまった…そう思った。
彼女がピンコさんの妹だという事実を知ったのも、そのすぐ後くらいだったな。
いつも俺たちが待ち合わせに使ってる部屋に、オドオドした表情で入ってきたときには本当に死んじまうかと思うほどに驚いたもんだ。
何故ここに? 何故君が?
そんなことを巡り巡らせている間に、こっそりとマッチョくんから教えられた。
「あの子はピンコさんの妹だ」と。
その日を境に彼女は毎日昼休みにここへ来て、ピンコさんに愚痴やらつい先程の楽しかった出来事やらを話していくようになった。
何でも、家に居てもピンコさんは忙しい為に話が出来ないらしい。
その為、寂しさや甘えたさ、それに加え心配が積み重なる故の行動なのだろう。
「ねぇ、マッチョくん。髭生やすの止めよーよ」
「ハハハ。髭は嫌いか?」
「ウン…だってまだ高校生なのに老けて見えちゃうよ」
「ダンディだろ?」
他愛のない話にも 名無しさんちゃんが居れば花が咲くンだ。
俺は知ってる…名無しさんちゃんが俺を怖がってること。
マッチョくんとは仲良くしているのに、俺とは目を合わすことすらしない。
誰だって分かるだろ…?
だってこんなに見てんだからよ。
俺はいつもいつも携帯を弄るふりをしながら耳を顰めることしか出来ないんだ。
ダセェ…
「お兄ちゃんは今日も集まり?」
「あぁ。お前は先に帰れ」
「分かった〜」
なぁ名無しさんちゃん。
俺がどれだけ君を見てるか知ってるか…?
君の行動の一つ一つ。
君の言葉の一つ一つ。
君の表情の一つ一つ。
全てがいちいち胸に刺さってきやがるんだよ。
むず痒いったらありゃしねぇんだ…
好きなんだよ
昨日も話せなかった
今日も話せなかった
多分明日も話せない
いつになれば君の瞳に俺が映るんだ
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