愛と殺意は紙一重

□み
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そして、あたしは、第三視聴覚室に向かって全力で駆け出した。
憎たらしいあいつの顔を思い出しながら。



みうちぎわの
  んかいぎょ



「はぁ、はぁッ...。」


走る、走る、走る。


「はぁ、はぁ、」


兎に角走る。


「ッく..はぁッ...。」


何でこんなに全力で走っているのか自分でも分からないが、無心で走る。


「はぁッ、はぁ...。」


向かうは、


「(見えたッ!)」


第三視聴覚室。


ガラガラガラッ


「は、ッ...幸村精市ッッ!!!!!」


「え?」


「え?」


「はぁッ...はぁ...は?」


勢いに任せてドアを開け、勢いに任せて幸村の名前を叫び、勢いに任せて教室の中に突入したあたし。
何度も言いますがあたしは正真正銘の馬鹿だった様です。


「え、あ、失礼しました。」


ガラガラガラッ


とりあえず何事も無かったかの様に平然を装って教室から出た。


「(え、ちょ、何やってんの!!今のはどういうことだ!!)」


椅子に座っている幸村に跨がる見知らぬ女の子、不自然にはだけた二人の制服、電気の点いていない薄暗い教室。
そして、何よりも、


「え、あれ、ヤってたよね...?」


教室内の言い様の無い甘い空気が、全てを物語っていた。


ガラガラガラッ


「ふぉッ!!!」


突然重い音を立てて開いたドアに思わず奇声が漏れた。
そして薄暗い教室から先程の見知らぬ女の子が飛び出してきた。
悔しそうに唇を噛みながら俯く幼気な彼女は、先程まであんな甘い雰囲気を作り出していたとは到底想像もつかない。
見知らぬ女の子は乱れた制服もそのままに、あたしを一度だけ小さく睨むとパタパタと廊下を掛けていった。


 
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