愛と殺意は紙一重

□ち
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「ねぇまりあ。」


「な、何でしょうか。」


「湯船、浸かんないの?」


「...今、髪洗い終わったばっかです。」


「そう。」


あたしの意思を完全にスルーしやがった幸村と不本意ながら、ほんっとうに不本意ながら一緒に入っている。
いや、本当に不本意だ。


「ねぇまだ?」


「...今から洗顔です。」


さすがに一緒に湯船に入ったらナニをされるか分かったもんじゃないから先に体を洗わせて貰っている。
(もう手遅れとかって声は聞こえない。)
とにかく一緒に湯船に浸かることだけは阻止したい。
あたしに出来ることと言えば時間稼ぎくらいだ。
だからもうこれでもかってくらいゆっくり、そりゃもう入念に全身を洗う。
幸村が逆上せて湯船から上がってくれることを願って。


「...あのさ、ゆ、幸村?」


「ん?何?」


「あの、あんまり見られると恥ずかしいなぁ...なんて。」


「ああ、俺のことは気にしなくていいよ?それよりまだ体、洗い終わらないの?」


「う、うん。まだかな。」


「そう。」


無言であたしの体を舐め回すかの如く見てくる幸村を出来るだけ気にしないようにしながら体を洗う。


「ふぅ...そろそろ限界かな。」


「え?」


そう言うと幸村はおもむろに立ち上がり浴槽から上がってきた。
(前を隠さないとかもはやデフォ。)
でもチャンスだ。


「(さっさと泡流さなきゃ!)」


あたしは慌ててシャワーのコックを捻り体中の泡を洗い流す。
とりあえず適当に洗い流してあたしは立ち上がった。


「あ、逆上せた?じゃああたし湯船浸かるから幸村洗っちゃいなy..」


ギュッ


「へ?」


「もう限界。我慢できないよ、まりあ。」


 
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