□握った剃刀は私なりの愛の形
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ドカッ バキッ


「ッぁあ"、う"..は..ぅッ..ぐッッ...。」


「痛いか?つばき、痛いんか?」


容赦の無い拳、蹴り。
雅治は煙草をくわえたまま私を見下ろしている。
体は休むことなく私を痛めつけ、口元には如何にも"楽しんでいます"と言う様な笑みを常に浮かべながら。


私の恋人、仁王雅治は俗に言うDV男だった。
負け試合の腹いせに私を殴り、煙草がストックが切れたと私を殴り、最終的にはシャー芯が折れたのは私のせいだと言って私を殴った。
様するに雅治は何かに付けて私を殴りたいのだ。


「おっと、手が滑ったぜよ。」


雅治の声に小さく顎を上げると、ぼやける視界が何か小さな赤を捉えた。

次の瞬間。


「ひッ、あ"あ"あぁぁぁぁ!!!!!」


ジュッと言う小さな音と共に、鎖骨に激痛が走った。
それは1度では終わらず、何度も何度も私に激痛を与えた。
それが終わったと思ったらまた殴る蹴るの暴行が始まった。


「ぁ゙ッ、ぐぅ...あ゙...。」


口の中が切れて、鉄臭い味が口いっぱいに広がる。
気持ち悪くなって胃液が喉をせり上がって来るが、必死にそれを飲み込んだ。
以前、耐えきれず吐いてしまった時があった。
その時の雅治といったら、本当に私を殺すんじゃないかと言う位の勢いだった。
汚物の中に私の顔面を叩きつけながら、"床を汚したことを死んで詫びろ"と、何度も何度も殴られた。


「(あの時は本当に死ぬかと思ったな...。)」


そんなことを考えていたら、だんだんと意識が掠れていくのを感じた。
グルグルと回る視界の中で最後に見たのは、冷たい目で私を見下す雅治の楽しそうな笑みだった。


 
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