□夢から覚めたら
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「ねえ、慈郎..。」


「ん〜?」


「あたし..跡部が好きになっちゃった。」


「え、..?」


「だから慈郎、別れよ?」


「や、やだよ!!俺別れたくない!!」


「ごめんね、慈郎。」


ガバッ!!!!


「ぁ..はぁ...はぁッ..ゆ、め?」


とても嫌な夢を見た。
世界で一番大好きなつばきが俺に別れを告げる夢。
尋常じゃない汗が、薄手のTシャツに染み込んでいる。
はあ、はあ、とテニスをやっている時の様に息が弾む。
そして何より、目の前の景色が若干歪んで見えるのを気のせいだと思いたい。


「ッはあ...。」


大きな溜め息をひとつ。
チラリと横を見ると、そこには愛しの彼女。
夢の中で俺に別れを告げたつばきは、いつもと変わらず幸せそうに眠っている。


「夢で良かった...。」


ポツリと呟くと、モゾッとつばきが体を捩りゆっくりと目を開いた。


「ん...じ、ろ?」


つばきは寝起き特有の掠れた声で俺の名前を呼んだ。
手はごしごしと眠たそうに目を擦っている。


「つばき〜。」


俺はたまらずつばきに抱き付いた。


「おっと、どした?」


無言でつばきの肩にグリグリとおでこを擦りつける。
さっきまでの不安を忘れられる様に。
女の子特有の柔らかさがとても心地良い。
暫くそうしているとつばきが口を開いた。


「慈朗..嫌な夢でも見た?」


「え?」


いきなり核心を突かれ驚くも、俺は小さく首を縦に振った。


 
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