愛と殺意は紙一重
□ゆ
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あたしは酸欠と混乱でグルグルと回る視界を無視して部屋を飛び出した。
ぴえろは
あまいゆめにおぼれる
あの部屋を死に物狂いで飛び出した。
自分が今クシャクシャな皺だらけのドレスを着てるとか、裸足のままだとか、そんなことはどうだっていい。
あたしは、幸村から逃げられたんだ。
「はッ...ぁ..ハァ..ハァ...。」
がむしゃらに走って、ただ走って、素のままの足が一歩踏み込む度に痛みを残したけれどあたしは足を止めなかった。
目的地なんてない。
自分が今何処に居るかも分からない。
幸村は追ってきていない。
息が苦しい、辛い。
なのにあたしの足は止まらなかった。
走って、走って、走って、走って、
いつの間にかどこかの町の外れに辿り着いていた。
あたしはゆっくりと足を止めた。
「ハァッ、ハァ..ゲホッ..ハァ..ハァ...。」
「(何処だろう、ここ。)」
ゼェゼェと呼吸を繰り返しながら周りを見渡す。
だけど来たことなんて勿論ないし、見たことすらない場所だった。
「(どうしよ、これから。)」
ふ、と冷静になった瞬間襲い掛かってきたのは壮絶な孤独感と不安。当たり前だけど足も痛いし、こんな格好だからかなり寒い。
ひゅるりと吹いた風にあたしは無意識に身体を抱いた。
帰り方も分からないし、勿論お金だって携帯だって持ってない。
まさに八方塞がり。
「もう、どうしろって言うのよ..!」
じわりじわりと視界が歪んでいく。
あたしはそのままペタリと座り込んだ。
「(なんであたしが、こんな目に合わなきゃいけないんだよ...。)」
どう考えてもあたしは悪くない。
いきなり監禁されて、侮辱されて、殺されそうになって、やっと逃げられたと思ったら知らない場所に一人ぼっち。
おまけに身体中ボロボロときた。
「(ああ、会いたいな...。)」
頭に浮かんだのはやっぱり愛しいあの人。
無理だと分かっていても、それでも、
「..え?もしかして..まりあ...?」