愛と殺意は紙一重
□き
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「森崎海斗と別れて、俺と一緒になってほしい。」
「俺を、あいして?」
きみのあいで
ぼくはしぬんだ
予想通りの言葉が胸の奥にストン、と落ちてくる。
縋るようにあたしを見詰める幸村とは裏腹に、そんな幸村をあたしは無表情で見詰め返す。
何故だが分からないが今のあたしは至極冷静だった。
別に先程の一世一代の告白にときめかなかった訳ではない。
あたしだって女だ。
あんな愛の言葉を吐かれたら無条件で胸くらい高鳴るし、嬉しくもなる。
現にあたしの心拍数は普段より間違い無く早かった筈だ。
それでも何故か頭の中はすっきりしていた。
「幸村、」
小さく名前を呼ぶと幸村はピクリと反応して少し目線を下げた。
あたしは構わず口を開いた。
「ねえ幸村、正直言うとね、ちょっと嬉しかったんだ、あたし。」
あたしの言葉に幸村はバッと顔を上げた。
切なそうな、儚いような、泣きそうな顔...だけどその表情の裏には微かな期待が込められている。
前のあたしだったら気付かなかったかもしれない。
だけど幸村に監禁されて、彼と過ごして、彼に触れて、幸村のこんな些細な変化が見抜けるようになってしまった。
皮肉、だと思う。
あたしが一番近くに居たい人のことは全然分からないのに、あたしが一番遠ざけたい人のことは何となくだけど分かってしまう。
だから分かる。
今の幸村はあたしがもしかしたら自分の気持ちに応えてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いている。
だからあたしは、
「それでも幸村は愛せない。」
その想いを一刀両断してやった。