愛と殺意は紙一重

□も
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プツ、プープープー...

「...何が王子様だ、」



ょうだい?
  みのなにもかも



「まりあ、」


「ッ!!..ッう..。」


幸村の声にハッと意識を戻す。
その途端に吐き気が襲ってきて慌てて口を抑えた。
胃の中で何かが激しく暴れている様な感覚がして、心無しか眩暈までしてきた。
冷や汗も止まらない。
そんなあたしを幸村は黙って優しく抱き締めて背中をさすってくれた。


「...大丈夫かい?」


暫くして漸く落ち着いたあたしは幸村の心配そうな声に小さく首を縦に振った。
幸村は心底ホッとした声で"良かった"と呟くと、"ちょっと待ってて"と口早に言って部屋を出て行った。
幸村の居ない部屋は当たり前だがとても静かで、何だか広く感じる。
未だに少しだけクラクラと回る視界に苛立ちを覚え、あたしはゆっくりと瞼を下ろした。


目を閉じると、途端に浮かぶ愛しいあの人。
優しくて、格好良くて、あたしに幸せをくれる王子様。
あの人と一緒に居る時は苦しい位に甘い想いが溢れてきて、...絶対にこの人しか居ないと思った。
本当に大切な人。
仁王が言っていたことも、悔しいけど納得出来る。もしかしたら、なんてことも正直考えてしまった。
本当は仁王の言う通りなのかもしれない。現に仁王の話はしっかりと確証があって、筋も通っている。
片やあたしにはなんの確証もなく、正直に言うと殆どあの人ことを知らない。
きっと今の話を聞いて99%の人は仁王や幸村と同じ意見だろう。

それでも、
それでも、あたしは、


「あなたを信じるよ...海斗。」


そう呟いた所で、ゆっくりと部屋の扉が開いた。


 
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