愛と殺意は紙一重

□が
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「仁王、そこまで言うなら証拠があるんだろ?」


珍しく黙っていた幸村が口を開いた。
幸村の言うことは正論。
あたしも幸村に便乗して続けて口を開いた。


「そうだよ、証拠もなしに仁王の言葉なんか信じられない。」


「...証拠、ね。」


仁王は少し間を置いて"あるにはあるぜよ。"と言った。


「ある、っちゅうんはちぃとばかし違うかのう。証拠が無いこと、これが紛れも無い証拠じゃ。」


「...は?」


仁王が何を言っているのか全く分からない。

あるのにない?
ないのにある?

難解な謎解きのような仁王の回答に、あたしは必死で頭を働かせた。
しかしいくら考えてもこの矛盾だらけな問い掛けの答えは出てこない。
あたしのゆるゆるな脳みそはすでにパンク寸前だった。
最後の頼みである幸村を首を捻ってチラッと様子を窺えば眉間に皺を寄せて黙り込んでいる。
どうやら幸村にも分からないことらしい。
幸村に分からないことを当然あたしなんかに分かる筈も無く途方に暮れていると、携帯から憎たらしい笑い声が聞こえてきた。


「クックックッ、お手上げか?」



「ッ...。」


人を小馬鹿にしたような声色にイライラが募る。
だが、生憎本当にお手上げ状態だから黙り込むしかなかった。


「沈黙は肯定ととるぜよ。」

そう言った仁王は至極楽しそうで、あたしの苛立ちはドンドン積もるばかりで。
あたしは幸村にバレないように唇を噛んだ。


 
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