愛と殺意は紙一重
□わ
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とりあえず電話の相手は幸村と同じテニス部の仁王君だということは分かった。
分かったが、何故ここで彼が登場するのかは全くの謎のままだ。
まさか世間話をする為に電話を掛けたわけじゃあるまい。
ぶっちゃけ仁王君とは殆ど関わったことが無い為、ここで世間話をしろと言われてもあたしのトークスキルでは一分も待たずとして沈黙が訪れると思う。
ここまで来て初めて幸村の存在に感謝した。(この状況を作ったのは紛れも無く幸村だが)
「まあ、自己紹介も済んだみたいだから早速本題に入ろうか。仁王頼むよ。」
きた。
幸村の言葉にあたしは小さく息を飲んだ。
「ま、姫さんに先に言っとくが恨むんなら幸村を恨みんしゃい。」
「は?」
突然のことにポカンと口を開けたが、次の瞬間仁王君の言葉の意味が良く分かった。
「森崎海斗、氷帝に通っとって俺らとタメでサッカー部。」
「ちょ、え、えッ?!」
電話から聞こえてきたのはまさかの海斗の名前。
いやいやいや、いろいろおかしい。
意味が分からな過ぎる。
何故仁王君が海斗のことを知っているのか、そればかりが頭をグルグルと回っていて気持ちが悪くなってきた。
とにかくこれ以上海斗の情報が幸村に伝わるのはまずい、非常にまずい。
あたしは咄嗟にベッドの上に無造作に置かれている携帯に手を伸ばした。
...が、その手は携帯に辿り着く前に幸村にパシッと手首を掴まれてしまった。
そのまま引き寄せられ後ろから羽交い締めにされる。
「まりあ、いい子だから大人しくしてようね?」
完全に身動きが取れなくなったあたしを横目に幸村は"そのまま続けて、仁王"と、死刑宣告を告げた。