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□白井先生の実験教室
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6月12日
ついに今日、例の薬が完成した。
開発には大分時間が掛かったが、これで良い結果が出せるのであれば何の問題もない。
しかし念のため動物実験はもう少し繰り返した方が良いかもしれないな。


6月13日
じれったいのですぐに人体実験に移すことにした。
人間も動物だからね。大して変わらないだろう。

放課後実験室に向かう途中、一人の生徒に目をつけた。
ミニペットボトルの飲み物を合計9本、袋から覗かせている男子生徒を私は呼び止めた。

日野貞夫。

彼は私の授業を受けている生徒の一人でもあり、新聞部に所属しているとても顔の広い生徒だ。
話し掛けてみると今日、日野くんは人数を集めて何か催し物をやるらしい。
丁度良い。私はその飲み物を冷やしてやるかわりに、今度やる実験の際に少し手伝いをしてほしいと申し出た。
頭の良い彼のことだ。私がただの好意に見せかけて飲み物をを預かろうとしても逆に不審がるだろう。
案の定、条件をつけることで日野くんはすんなり飲み物を渡してくれた。
…私は彼を騙しているわけではない。少し実験を手伝ってもらうというのは嘘ではないからね。


キャップを開けずに薬物を投入するなどたやすい。
後は日野くんが飲み物を取りに来るのを待つだけだ。


日野くんがジュースを取りに来たのは、もうだいぶ暗くなってからだった。
新聞部に戻った彼は全員に飲み物を配った。どうやら一人足りないようだが問題はないだろう。
…ふむ。全員飲んだようだね。
この時間じゃ結果が分かるのは明日になりそうだ。
今日はここで引き揚げるとしよう。
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