ノベル

□出会い
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ああ、あああ……
見た。見てしまった。

坂上君…あたしの大好きな坂上君……

恵美ちゃん…あたしの大好きな恵美ちゃん……


そうよね…二人とも、お似合いだもの。

大好きな二人だから、幸せになって欲しい……



二人が抱きしめあっているのを見た次の日。
あたしは一人、学校の屋上にうずくまっていた。

あたし、本当に、二人には幸せになって欲しい。

…でも、でも、あたしは坂上君と結婚出来なかったら、一生結婚出来ないってお婆ちゃんが言ってたの……

あたし、このまま一人で生きていくの?
自分の子供を作ることも出来ずに死んでいくの?


お婆ちゃんは、あたしの為なら二人の仲を裂いてくれるとまで言ってくれた。

だけどそんなの、絶対に嫌よ!

なのに、幸せになって貰いたいと思う反面、どうしても哀しみが収まらない。

そんな自分勝手なあたしが本当に嫌!


こんなんじゃ…友達だって、出来るわけないよね……



「どうかしたのかい?」


不意にかけられた言葉にビクリとする。

驚いて顔を上げると、見知らぬ長身の男子生徒が、あたしの顔を覗き込んでいた。

その近い距離に驚いて後ずさる。

「だ、誰ですか!?」

「えっ!?僕のこと知らないの!?」

その人は大袈裟に驚いてみせた。

…知らないと変なのかしら?
慌てるあたしに、お婆ちゃんが名前を教えてくれた。


「風間…望さん?」

「えっ!?僕のこと知ってたのかい!?」

…知ってても知らなくても驚かれるなんて、一体どうすれば良いのかしら。


「いやぁ参ったなぁ。君、一年だろ?こんな下級生の子にまで名前を覚えられるなんて、これも一重に僕の魅力が…」

「あの、すみません、お婆ちゃんに聞いたんです…」

「え?そうなの?いや〜君のお婆さんにまで名前を知られているなんて光栄だなぁ……もしかして君のお婆さんの名前は和子さんかい?違う?あ、そう」

その人はあたしに息をつく暇も与えず、べらべらと喋り続ける。
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