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□間違いX'mas
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12月25日。綺麗に彩られた夜の新聞部室に、ある二人の人物の声が響く。
「皆さん遅いですね〜新堂先輩」
「まぁ俺らは前もって飾り作ってあったからな」
「…新堂先輩って案外凝り性だったんですねぇ」
「そうか?福沢のワッカも悪くないぜ。俺はそういった細かい作業が苦手でよ」
自分達の割り振られた仕事が終わった二人は、しばし雑談に耽っていた。
そこに新たに複数の声が加わる。
「寒い寒い!ただ今戻りました〜…あぁ重かったぁ!」
「……細田君はともかく、僕と倉田さんが重い荷物を運ぶ事になるのは、やはり間違いですよね」
「えぇ〜僕だって疲れたよ!そう言う荒井君が一番元気そうじゃないか」
「あ、部屋の飾り付け終わったんですね〜……」
倉田は部室を見回して、少し言いよどむ。
「えっと…男の子が喜びそうな飾り付けですね」
「そうか?まぁ俺も慣れないなりに頑張ったからな」
見ると部室の壁や窓には、スポーツで使う色々なボールや道具をかたどった飾りが所狭しと張り付けられていた。
クリスマスツリーに似せた飾りにもそれらがくっつき、もうクリスマスを祝いたいのかスポーツを讃えたいのかよく分からないことになっている。
「…やはりクジで担当を決めるより、話し合いで決めた方が良かったですね」
「あ?なんか言ったか?」
「いえ、別に…」
そして五人は残りの四人を待ちながら、しばし歓談に耽った。
「…それにしても、皆ちょっと遅くない〜?」
「確かにそうだな。ケーキの係りならまだしも、日野達は説得に行っただけだろ?」
「ま、まさか失敗しちゃったのかな…」
皆は黙り込んだ。
宿直室に向かったのは日野と岩下だ。例え説得出来ずに怒らせたとしても、そう簡単にやられるとは思えない。
だが相手があの黒木では……どうなるかは分からない。
「…それを言うなら坂上君は僕達より一時間程早く来ている筈です。」
「そうですよね。終わる時間が合うようにしたわけだし…」
部室内に沈黙が漂う。