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□恵美ちゃんの妄想日記
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ある日恵美ちゃんは考えた。
最近自分の小説がマンネリ化してきてはいないだろうか?
…まぁモデルがモデルだからね。
馬鹿坂上とホモメガネ日野。
今でこそ恵美ちゃんの表現力のおかげで大人気を誇っているものの、このまま坂上と日野が飽きずにイチャイチャしてるだけじゃ、流石に読者にも飽きがくるわよね。
次の新刊は、ちょっと趣向を変えてみようかしら?
て…ちょっと、あれ坂上じゃない?噂をすればゴキブリみたく出てくるんだから。
あたしの道の前に立たないでよね!
「あ、倉田さん!」
坂上はニッコリ笑って、あたしに手を振ってきた。
…このぶりっ子が。自分が可愛いとでも思ってんのかしら?
「坂上君、おはよう!何をしているの?」
「何って、今荒井さんと話を…あいてっ!何するんですか荒井さん……何で隠れてるんですか?」
「……坂上君、あなた…本当に鈍感な人ですね」
柱の陰から陰鬱そうな顔がひょっこりと現れた。
「あ、荒井さんじゃないですか!」
「……どうも」
何よその嫌そうな顔。
ムカつくけど、あたしは笑顔を絶やさずに答えてあげたわ。
「おはようございます荒井さん!二人で何をしてたんですか?」
「うん。この前荒井さんに借りたゲームで分からないところがあったから、教えてもらってたんだ」
「ええ、偶然ここで会ったものですから。ほんの数分会話しただけですし、その話しかしていませんよ」
「…荒井さん?何か、顔怖いですよ?」
「坂上君はちょっと黙ってて下さい。…なので倉田さん、変な勘違いとか想像とか妄想とか、やめて下さいね?」
「はぁ」
何よ、勘違いって。わけ分かんない人ね。
「変な勘違いって何ですか荒井さん?」
「だから君は黙ってて下さい……とにかく倉田さん。くれぐれも変なことは考えないようにお願いしますよ。それでは僕はこれで…
ちなみに坂上くん。君の言っていたキーアイテムは、流しを二回調べると見つかりますよ」
「えぇ!そんな所にあったんですか!?ありがとうございます荒井さん」
坂上がそう言い終わる頃には、すでに荒井さんはいなかった。