暗い夢2

イート
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愛してるよ。




あの頃のように、私はそう呟いて彼にキスをする。
世界で一番大好きな彼。


愛して愛して、こんなにも私は愛しているのに。



ねえどうして。



どうして。













『俺、もうお前とは付き合えへん』






どうして?






『他に好きな奴が出来てん。堪忍な…』






私は侑士を愛してるよ。







『それでももうアカンのや』







どうして?







『お前の事、もう愛せへんのや』













「愛してるよ、侑士」






しかし彼からの返事はない。
まるで私の愛に答えられないと言わんばかりに口を紡いでいる。




どうして?
私はこんなにアナタを愛しているのに。
他の男なんか知らない。
知っているのは侑士だけだよ。





真っ白で透き通る、綺麗な肌を撫でた。
いつの日か、冷え性なんだと言っていた彼らしくその肌は冷たかった。





「愛してる」








 
侑士の指も、目も、肌も、足も手も耳も鼻も、全部全部愛してる。
食べてしまいたいくらいに、愛してるのに。







私は彼に沢山の愛を語るのに、彼からは何一つ返ってこない。







お腹は満たされていた。

しかし、私の心はいつまでたっても満たされない。





このぽっかり穴を埋められるのは、侑士だけなのに。





「愛してる」




そう、ポツリと呟いて、目の前で眠る侑士にキスをした。











 



(愛を叫ぶ、少女の心は満たされない)



 

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