明るい夢

向日葵の咲く廊下
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校内絵画展覧会で、廊下に張り出された何枚かの作品の中から、一際繊細で綺麗な印象を受ける作品を見た。
白いキャンパスに描かれる淡い黄色の向日葵が一輪。バックには淡い水色で描かれた空。タッチからいくと、透明水彩だと思う。
特別目立つってわけじゃない。むしろ素朴な印象を受けるその絵だけど、私は他のどの作品よりもこの向日葵の絵に一番魅力を感じた。


作者は一つ上の学年の「幸村精市」さん。名前は聞いたことある気がするけど、顔は知らない。これを描いたのが男の先輩だと知ったとき、軽い衝撃を受けた。絵からは繊細で華奢な女の先輩が描いたようなイメージが湧き出ていたから。




「この絵、綺麗だよね」




隣を歩く友人から「どぉれ?」と声が聞こえる。私の指差す先の向日葵の絵に目を向けた友人は一瞬きょとんと目を丸くした後他の作品を一眼し始めた。


「これよりもっと目立つの沢山あるじゃない」


友人はそう言って一番目立ちそうな派手な色合いをした作品を指差した。


「確かにあるけど、」


 
あるけど、目立てばいいってもんじゃない。そう言おうとしたけど、それでは友人の指さしている作品を貶しているように聞こえるから、私は敢えて口をとじた。



「けど?」

「なんでもない」



そろそろ授業が始まる時間だったから、私はこの話題を止めて教室へと歩き出した。


 
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