暗い夢

輪廻
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ぐしゃりと何かが壊れる音がした。


目の前で床にうずくまり必死に悲鳴を上げているのは、俺の1つ上の先輩。
先輩の髪の毛を一束掴み上げてみれば、そこには涙と鼻水とでグシャグシャになった顔。
ところどころに青紫色の痣と赤黒い血液。
殴りすぎちまったかな、少しばかり変形した先輩の顔。


「ひっ…、酷いよ赤也君、い…いくらわたしが嫌いだからって、っこんな暴力…」


嗚咽と震えで何言ってんだか全然分かんねぇけど、大体言いたい事は伝わってきた。
先輩は1つ、大きな誤解をしている。


俺は先輩が大好きだ。
いつも傍に置いておきたいと思ってるし、ずっと俺だけを見ていて欲しいと思ってる。
俺は先輩さえいれば世界中の女が滅したって構わない。
それくらい先輩中心に俺の世界は廻っていて、俺にとって先輩は必要不可欠、生きる源。


それなのに、先輩は違うらしい。

先輩は俺を束縛なんてしないし、他の男とだって平気で話をしていて、その上楽しそうな笑みを向けている。
きっと俺以外の男が消滅してもいいだなんて考えは微塵も持っていないだろう。

 

ああ、何故。
俺が先輩を必要としているように、先輩も俺を必要としてくれなくちゃ。
そうじゃなきゃ駄目だ、だって不公平。
人間は平等なんだろ、公民の授業で先公が言っていたのがぼんやり耳に入った気がするし。
俺だけが先輩を必要としてるこの一方通行みたいな関係は不平等だろ、これはどうにかしねぇとって思った。

だから今こうしてる。
こうして先輩の綺麗な身体をグシャグシャにしてやれば、他の男に顔見せなんて出来なくなるだろ?
男に恐怖感を持って笑みなんて浮かべられなくなるだろ?

嗚呼ちなみに俺は先輩がどんなに変貌しようと全然平気。
俺は先輩自身を愛しているから、姿形が変わろうと関係ないね。
だから安心してくれていいッスよ、どんなに醜い姿になっても俺の世界は一生先輩で廻ってるッスから。


愛してるッスよ、先輩。












(バキリと鈍く音がした、)

 
 

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