暗い夢

赤い華
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「ねぇ雅治、私たちってずっと一緒にいられるのかな」



雅治と付き合い始めて一年半たった今日、私はシンプルすぎる彼の部屋でポツリと呟いた。

部屋で目に付くものといえばテーブルと乱れたベッド、散乱した避妊道具や洋服だけで、それはとても寂しい光景。

私の問いかけに対しての雅治からの返事は無く、この寂しい部屋に虚しさが散った。

私はそれ以上追求する事はなくベッドの上でボンヤリと裸な自分の身体を見つめた。

一年半たった今では、私たちの間には昔のような恋人特有の甘さは消え失せていて、残っているのは身体を結ぶ関係のみになっていた。
その証拠に、見つめた私の身体には点々と雅治につけられた赤い華が咲いている。


名前を呼び合う事も、キスをする事も、いつからかこんなにも少なくなってしまっていて、そんな出来事は思い出せないくらいに本当に懐かしいものになってしまった。


ギシリとベッドが揺れたから私は自分の身体から目を離して雅治を見つめれば、雅治は無言で床に散らばった服を着込んでいた。



「出掛けてくるぜよ」



 
身なりを整えた彼は、私の方を見ようともせずにそれだけポツリと言っては玄関へと向かっていった。



私はそれに対して言葉を返す事もなく、この静かな部屋で扉が閉まる音だけが耳に残った。







(…私も帰ろ)



私は裸のままベッドから立ち上がり、散乱した洋服たちをかき集めた。




私の一生を共に歩んで行く人は、きっと雅治ではないのだろうな。
私たちはお互いに、いつか全然別の誰かと生涯を過ごしていくに違いない。


そんな事は初めから分かっていた。
分かっていたけれど、それを寂しいと感じてしまうのは私がまだ雅治の事を好きだからだろうか。


自分自身の気持ちが全然分からないが、きっと雅治はいつか私から離れていってしまって、私もまた新しい相手を作るのだ。
だってまだ、私たちは中学生。







私は荷物をまとめ、少しの哀愁を残して寂しいこの空間を後にした。














(瞳孔を目一杯に開いた、未来はカケラも見えなかった)
 

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