桃海小説(短)2

□不埒は駄犬を躾ける術
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不埒な駄犬を躾ける術





「は…ぁ。」

桃城に掴まれたままの腕は、ぎしっと軋んで痛い。
俺は、酸素を欲して、大きく息をすった。






いい加減、このままではいけない。
「つ…かれたー、海堂。動けない…」
「そのエネルギー…、っ…全部テニスにつかえ!!」
「そんなん、別に決まってんだろーが。」


桃城いわく、デザートは別腹。
俺は食い物じゃねえ!!!そういって奴の頭を殴ると。
おいしかったのに?とかムカつくことばっかり、吐きやがるから、
俺はコイツを蹴り飛ばして、ずり下げられた服をあげて部屋を出た。






これはヤバイ。アイツ、…味をしめやがった…。
アイツは、こう言う事は正直に求める性分らしい…。


後ろから、走ってくる足音が聞こえる。桃城だろう
「おい、海堂ー。イキナリ帰るなよ!ビビんだろーが!」
「勝手にビビってろ。」
「…海堂さぁ。」



桃城は、ぼそっと何かをいった。
「きこえねぇ。なに?」
「な、な…んでもねーっ!」
うん、なんでもない。桃城はそう呟きながら、俺の腕を掴んだ。


「もっかい、俺んち戻ろ。もうしねーから」

桃城は、子犬みたいな顔をしてそういった。
馬鹿にしてんのか。
いい加減、俺も学習するんだぞ。
お前そんな事いって、いっつも… してくんじゃねぇか。

それでも、俺はコイツの家に財布を忘れたことを思い出して
行く事になるのだけど。






思ったとおり、こいつはまた性懲りもなく、熱をだしていた。
今度は、漫画だの、物が散乱した床の上に押し倒され、俺の怒りは頂点に達した。




「お前、いいかげんにしろよ」

俺が、髪を思い切り引っ張ると、桃城は酷く驚いたように俺の顔を見た。
「い、てぇ。かいど…。髪は止めろや」
「俺のがイテェんだよ、はげ」

桃城は俺が本気で怒っているのに気づいて、乗り上げていた身体を
やっと起こした。

「お前は…やりすぎだ」
「悪い」

反省は一応しているようで、俺も少し落ち着いた。
「海堂、見てると。どーしても、やばいんだよ」

その気持ちが、いや とは言わない。
けど、しなくてもすんでいたあの頃、あったはずなのに。

「俺達、そんなんじゃなかったろ」
「俺、そんなんだったよ。手、出さなかっただけ」
大事だから。

「今は違うのかよ。俺は大事じゃねーのか、そうか」
「ちげーよ。ちげーって…。お前だって分かるだろ?
 俺として、気持ちよくなかったわけじゃねーだろ?」

それは、そうなのだけど。



「してるとさ、お前とずっと一緒に居られる気がするし
気持ちーし…、なんかほわほわすんだ」
「………。」



「お前、あったけーし。」
「夏だろーが、暑いんだよ。」


俺は、桃城の頬を軽く叩いた。



「しなくてもいい、方法。あるんだぜ?でも」

桃城は、叩かれた頬を撫でながら俺をみた。









「あつい」
何故、こうなるのか。分かるのだが。

「こうさ、お前に乗ってんの好きなんだ。肺の音とか落ち着く」


桃城は俺の上に乗り上げて、ぴったりとくっついていた。
確かに、落ち着く。
お前とくっついてるのは、いやじゃないんだ



桃城は俺の胸に頭を擦り付けてくる。

甘えたがりなのか、俺だからなのか
よく分からないけど、






桃城の手が不意に、俺の肌を這わせてきて、
「お…い、馬鹿。やんねーんだろ?」
「うん、やんねーよ。やんねーけどね」



触らせて、



あーもー。コイツは。


俺は、またコイツの頭を1回殴った。






駄犬が一匹と、駄目な飼い主が一人。







躾ける方法はありません。



2009、7 19

あれ?

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