桃海御題
□ 07.嗄れた声
1ページ/1ページ
酷く焦らされたのだ
身体に渦巻いている熱がジワジワと
そして確実に海堂を追い詰めていった。
流石の海堂も耐え切れず
彼の腕にしがみついて
まるで泣いているかのように
喉から細い悲鳴をあげ続けた
そのうえ真冬のさなかにも関わらず
体温の高い二人は
布団もかぶっていなかった
だから
「はっくしゅ…っ」
風邪なんかひきそうにもなかった健康な海堂が
喉を枯らしてしまったのは桃城のせいだと
海堂は朝から桃城を睨みつけていた
そんな海堂の気持ちも露知らず
桃城は海堂の枯れた声にニヤニヤと緩む顔を抑え切れなかった
「くくっ、俺のせいだもんな」
「うる゛っせえ゛」
海堂は手元にあった枕を桃城に投げ付けるが
それでも桃城は笑うのを止めない
「昨日は寒かったもんなぁ?」
「…っ」
寒かっただけでは喉は枯れなかった筈だ
同じ場所にいた桃城の喉は枯れていないのだから
「責任とってあげたいんだけど」
お医者さんごっこでもする?
と笑った桃城の指が海堂の唇をかすめた
それは酷く愛おしげに
そんな顔されたら堪らない
海堂は恥ずかしさからか顔を赤らめたが
桃城の台詞を思い出して
ふざけるなと声を荒げた
それでも微笑んだままな桃城が
だんだん詰め寄っていくのに焦った海堂は
ベッド上で後ずさる
しかし直ぐに背中に壁が現れ逃げ場はなくなってしまう
微笑んだ桃城は腕を掴んで海堂を横に倒すと
頭の両脇に肘をたてて海堂を見下ろした
「く、ぐそ…はっはな゛じや゛がれ゛…!」
「あーもー可愛いな可愛いー!」
なんていったって
自分のせいで啼きはらした海堂が声を枯らしたことが嬉しくて堪らないのだ
「観念しろよ」
顔を真っ赤にした海堂に覆いかぶさったまま
桃城はキスをおとした
2010 12 12