桃海御題

□04.首輪
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 ペットショップに二人で出かけることになるなんて、出かける今朝までは思いもしなかった。
ましてや、桃城なんかに俺が犬、とか…猫とか、好きだなんて絶対ばれてない自信があるし。
…隠しているわけじゃないけど、知られたら少し恥ずかしい気持ちがあるのも嘘ではない。



だから二人でペットショップの入り口に足を踏み入れることなんてないと思っていたのに…。








 そもそも、二人が出かけることになった経緯とは部活の先輩の誕生日が来るので
ケーキと、クラッカーと、あと飾り付けの折り紙が必要だよね!買い出しする人決めよ!

なんて頬に絆創膏をした気分屋の先輩が
何故か俺達二人をその役割に選抜仕立てあげた結果なのだ。


 …なにを企んでるのかは知らないが、ろくなものでもない。
その買い出しの日だって部活がある日だし…。

 

 それなのに、こいつ、桃城ときたら何がそんなに楽しいのか
買い出しの朝っぱらから上機嫌に俺の家にまで迎えに着やがって…



「よぉ!デートだぜ!デート!早くしたくしろよー」


 なんて小さな、あくまで小さな声で俺を急かすんだから。
ため息だってこぼしたくもなるだろう




「さ、海堂、いこうぜ、」


 しかし、気持ちが悪いほど桃城の機嫌がいい。
会った時から、こうもテンションが高いのも気持ちが悪いが、
なにか悪事を働いて、それを隠しているようにも見えない。










 街中に入って、桃城のテンションのうざさが最高潮にはいるころ、
桃城は何かを見つけたのか歩みをとめた。


「…?桃城?」

「…ん、なあ!あれみろよ」



桃城の指差す方向には、越前の家の猫…
ではない、越前の家の猫と同じ種類の猫が四角いいくつもあるケースの中にの一つに入っていた。
ペットショップである。



か、かわ、かわいいいいいい



俺は一目でそのペットショップに目を奪われた。
中に入れば、もっとたくさんの子犬など、子猫などがいるに違いない…!

普段人目を気にして入れない場所でもあるから、憧れも人一倍あるのだ。
見るだけでも…、見たい。



 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか…


「な、入ろうぜ?時間はゆっくりあるんだしよ?」



 素直には頷けない俺の腕をつかむと、桃城は有無を言わさず俺をひぱっていった。
コイツのこういう強引なところに、困るときもあるけど、
今日みたいに助かることも多々あるのだ。
何分、自分は素直ではないから…、





ペットショップの戸が開いて、カランカランというからりとした音が鳴り
そこからすぐ、犬の鳴き声や小鳥の鳴き声なんかが溢れだした。


「うあ…」


 俺は天井を見上げて、ゆっくり視線を下におろしていき、
声の主たちを目にとめた。




「うわーー、めちゃくちゃ動物の匂い!」

「あほか!」


 俺は焦るように、子犬たちのはいったガラスケースに近づいていった。
ふわふわして、きゃんきゃんないて、お澄まししたり、おもちゃであそんで…。
こんなかわいい生き物がこの地球上にいていいのか!!!

なんて訳の分からないことを頭で叫びながら俺はガラスの向こうのつぶらな瞳を見つめていた。






「かーーいど、」


「ひぃっ!!」




 ふぅっと俺の耳に息を吹きかけられて、身の毛がよだつ。



「ほら、海堂、子犬って手とか追いかけて遊ぶんだぜ、ほら、」


 桃城はガラス越しの子犬に笑いかけると、掌を左右に俊敏に動かして見せて、
それに子犬は尻尾を振って嬉しそうに追いかける。


「直接触れるわけじゃねーけど…、かわいーもんだろ?」

「…てめーが威張ることじゃねーだろ…」


「へへ。ほら、おっ、こいつ、結構俊敏」



 ほら海堂、見ろよ!と笑顔でこっちに振り向くもんだから、
俺はどうしようもなくコイツに愛おしさを感じた。

 犬、大型犬みてぇ…、
犬だったら抱きしめてしまうところだったが、相手は人間、桃城!
俺はぶんぶんと頭を振って雑念を払うと、今度は猫のコーナーに目を向けた。







「あー!海堂ー海堂ー。これ見ろよ!」


 こうしてると、本当に桃城の言うとおり、デートの様だ。
俺達の普段は、出かけたりしたって
ほとんどテニスをしたりするくらいで、
デートという、デートらしいことなんて、なかったのかもしれない。

 悪い気はしないんだ。
俺は本当はうれしいくせに、しょうがない、なんて顔をして桃城の呼びかけに振り向く、




「これ、似合いそうじゃねえ?」




 やけに嬉しそうな、桃城の手にある首輪が俺の目に映った。
黒とピンクのチェック柄で、真ん中に鈴がついていて、こういうセンスは俺には良く分からないが、きっと可愛いのだろう。

 しかし言葉の意味があまり理解できない。



「…なに?似合うって、どの猫に?」


「ちがう、ちがうって!」


 桃城は嫌に笑顔で、しまいにはくくっという、人を馬鹿にしたような笑い声をあげるので
俺はつい眉間に皺をよせた。


桃城は涙が出るほどおかしかったのか、少しばかり目元をこすって


落ち着くために一息履いて、俺を見つめた




 その顔がまるで反則なんだ。





まるで全て見透かすような、それでいて厭らしい笑顔で、
性質が悪いほど男臭い顔。
それでも俺はこの顔が好きだったりするから始末におけない。





「おまえに、これ、似合うと思ってよ…?」




にやにやした表情は崩さず、桃城はその首輪をチリンという音を鳴らせて
俺の首元に合わせた。


「…てめえ!!!」


 何を言うかと思えば、やっぱり戯言でしかない!
俺はこいつを殴るための拳を握りしめ、いっきに振り上げたが、
桃城は曲者の瞳で、子犬ちゃんたちの前でそんなこと出来るんだ?なんて
卑怯なことをいうのだから。


 俺が怒りの冷めない拳をしぶしぶとさげると、からからと笑い声をあげる桃城を睨みつけるのだが、
その当の本人が手に持っていた首輪をそのままに、会計にむかっていくために俺は目を見開いた。




「お、おい!お前それ、」


「薫ちゃんにプレゼント!」


「おま!ふざけんな!」




 止めようにも、すでに時遅し、
首輪の入った紙袋を片手に、桃城は「そろそろ行くか」と出口の戸に手をかけ振り返る。


先ほどの表情とは一変して、表情はいつもの人好きのする笑顔で、
それでもその裏には、あの男臭い笑顔を隠して…。












2011 9 27



この後、海堂は鈴月の首輪をつけたまま桃城に襲われて
動くたんびに鈴が鳴るっていう

エロの極みに到達するんだろうね!!!!
私そんなんかけないよね!!!!
まんがなら書くかもしれねーが
小説って逆にかけねーよね!!!!
愛!

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