桃海小説(短)3

□夏のあいつの
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「うっわ、最悪…」



 朝目が覚めると蚊がさしたと思われる痕跡が
足、太もも、太ももよりも少し上あたりの、股下の、足の付け根より五センチ下のあたりについていた。
しかも、蚊である証拠にとっても痒い。



「蚊取り線香、買いにいかねえとな…」


 とりあえず、今は薬を塗る事にしようと、桃城がまだ隣で寝ている布団から這い出て
薬の入っているはずの引き出しをあけた。


「…あ?ねえ…。あのバカ、また違う場所に戻しやがったな。」




 寝ている桃城のオデコを軽く叩いて起こす。
桃城はうっすら目をあけると、にまっと笑って寝ぼけたような声で「おはよ」と言ってきた。

「おはようじゃねえ、薬どこだ、この間お前使ってただろ」

「あ?くすりぃ?どうした」

「どうしたじゃねえよ、蚊に刺されたから使いてぇのに、テメーが分けわかんねぇとこにおくから…」


「あー。蚊ね、今取りに聞くからまってろ。」



 桃城はのそのそと布団(ほとんど寝相が悪くてかぶってもいなかったが)から這い出て、俺の開けた引き出しの隣の引き出しを開けて薬を取り出した。


「そこに仕舞えるなら、ここに仕舞え!バカ!」


「成長しただろーが?」


 にやにやと笑ってる桃城から、薬を受け取ろうと手を出したが
桃城はすっとそれを綺麗にさけてしまう。


「?おい、桃城」


「塗ってやんよ、さされたとこ見せな」


 そういってぐいぐいと俺を布団の方に押し戻して、無理矢理座らせた。


「いい、自分でぬれる」

「遠慮すんなって、おら、どこだよ」


 これはもう、絶対に塗らないと気が済まないらしい。
ぐだぐだしていても仕方ない、さっさと見せて終わらせよう、と
俺はさされた部分を見せた。
Tシャツに、下は下着だったので見せるのも簡単なのだが

 桃城はさされたとこを見ると、にやにやしていた顔をさらに緩めた。



「まぁた、ギリギリなとこ刺されたもんだな。薫ちゃん?」

「うっせえ、薫ちゃん言うな」


 くく、と笑う桃城は、足貸してと
俺の足を開いてその間に身体を入れてきた。
やりやすい格好だとも思ったが、格好が格好だけに羞恥を感じる。



「なーんでこんなとこ刺されんのか、海堂足開いて寝てんだろ?」

「寝てるんだからしらねえ!」


 桃城が指に薬を付けて、まず俺の膝あたりの虫さされに塗り付けた。
ひやっと冷たい感触がして、少しかゆみが楽になったような気もする。(ほんとうに気がするだけ)

何カ所か塗ってもらって、最後の付け根から五センチ下の虫さされに桃城が触れると、
俺はくすぐったさに、身体をびくつかせた。


「くすぐってえ?」


 顔もあげずにただにやにやした声で、薬を塗り付けてくる。
俺ははやく終わってほしくて、ぐっと我慢するが、桃城はそこだけ念入りに薬を塗ってきて、
俺はいい加減抗議を口に出そうとしたときだ。



 びくんっと身体が大きく波打つ。



桃城の手が下着に入り込んで足の付け根を触ったからだ。



「も、桃城!てめえ!そんなとこ刺されてねえ!!!!」

「わかんねーだろ?見えてないだけで」



にやにやした顔をやめない桃城に俺はいろいろと後悔した。






2012 8・1

この続きを漫画でかこうと思ってます。

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