桃海小説(短)3

□ありかた
1ページ/1ページ


 所謂、初めて見た時から君を好きでした。

なんて展開に憧れていたんだけど




 結局それは叶わず、代わりと言っては雲泥の差
腐れ縁で繋がってしまう奴と出会ってしまうとは


しかも、それが先の未来、恋人という位置にたどり着こうとは
 今でも信じられない。





「だって、お前男だしな。」

「あん?」



 出逢えば、経つ時の流れも早いもので、
既に俺たちは酒をたしなめる年齢になり
元テニス部二年生同窓会という名の、飲み会に参加した俺は
今まさに、それを実感していた。






(あの海堂がお酒を飲めるように…ね)



 生ビールを片手に俺は隣で、梅サワーを飲む海堂を盗み見た。


あの頃既に俺なんかは、もうお酒を飲んでいたし、
俺の友達でも飲んでいる奴はいた。

 でも、やっぱり海堂は飲まない。
真面目な気質からなのか、そういう環境にないからなのか
一度俺が誘ったときには、じっと俺を見つめたあと、ただ一言『断る』と言ったことを覚えている。


 陰気で嫌な奴だと


ちょっと飲むくらい構いやしないのに、そう思った。


 
 ただ、偶に見る海堂はひたすら真っ直ぐで
自分を騙そうとしなかった。
馬鹿みたいに真面目で、


俺もそのうち、

そんな海堂を可愛く思った。






 可愛く思ったあたりで留まればいいものを、
俺はだんだん海堂をソーイウ目で見始めてしまうのだから。
自分で自分の変態さは、かなーり自覚しているつもりである!










 そんなこんなで、俺がいろいろと思い出にひたっている時、隣で空になったグラスをテーブルにおく音がした。


「次は、ビールがいい…」

「うわ、まだ飲むきかよ?」

 
 ちなみに海堂はいくらでも飲める立派な男になりました。それはもう


「そんなあっちゃこっちゃな飲み方してると
 悪酔いすんぞ?」


「…そんなやわじゃねえ…」




 海堂が酔い崩れることは殆ど無い。
酔った勢いでいい雰囲気に…なんていう計画を立てたこともあったが、
すべて失敗に終わっている。

俺が先に潰れるからね!!




(でも、介抱してくれる海堂がいつになく優しいから、それはそれで気持ちよかったり)




 店員に注文を追加したところで、海堂は立ち上がった。

「あれ?海堂帰っちゃうの?」

 他の奴らが、ちょっと控えめに海堂に尋ねる。

元テニス部員にとっては今でも、海堂という存在は
威厳に満ちた部長であって、コワモテな同級生であって
今になってもちょっと怖い存在なのだ。


 海堂はふるふると首を横に振ると、飲み会の座敷から外れた。
俺もごく自然とそれを追いかける







「どうした、海堂?具合悪いのか?」



 外まででて、涼しい空気を吸い込むと酔いが覚める感じがした。
海堂はちら、とこちらを見ると鼻で笑って、んなわけねえと言う。

そんな顔がやっぱりきれいだとか、何年経った今でも俺は思ってしまう。

 でも、この海堂の鼻で笑う、っていうのには、悪いバージョンのといいバージョンのとがあるので
使い方次第では喧嘩の元である。

今のはいいバージョンの方だったのだ。
馬鹿にするようではなく、その空間を、時間を、愛おしげに感じさせる

俺だけが知る、綺麗な笑みなのだ。





「桃城、」

 不意に呼ばれたと思えば、海堂の顔が目の前に
それと同時に唇を掠める暖かさを感じた。

 人通りがない訳ではない。
いつ人が通ってもおかしくない路上で、海堂は満足そうに俺の唇から離れていく。

それに俺はひどく欲情した。
離れていく海堂の後頭部を押さえて、噛み付くように
次は俺から唇を奪った。


「ん…はぁ、、んっん」


 海堂の唇をべろりと舐めると、海堂の体がぞくぞくっと震えたのが分かり、するとすぐに俺の背中にしがみ付いた。

程よいお酒を飲んだ所為なのか、すごく興奮する。
今、自分たちがいつ、誰にみられてもおかしくない場所にいる、
ということを理解しているつもりなんだか、
それでも欲情が勝って、止めようにも止められない。


 しかも、いつもはなかなか開かない海堂の口が、
今日はなぜか簡単に開き、俺が舌を入れると
それに積極的に絡ませてきた。


 いまここでヤッてしまいたい。
ここに組敷いて、そのまま海堂を味わいたい。


濃厚なキスは、じりじりと海堂を味わい追いつめていき、
海堂の足が絡まってバランスを失い地面に倒れ込んだことをいいことに、俺はさらにキスを深く深くしていく。



 俺は公共の道にいることなんて頭からすっぽ抜けてしまったらしい。
海堂の肌を服の上から弄り、胸の突起をみつけると
布越しから、親指でつぶすように弄った。




「…っ、んン、、ぁっ……アっ」

 海堂は体をよじって俺の愛撫から逃げようとするが、俺はそれを押さえ込んで再び突起に手をかける
芯をはらんだそれをつまんで、
服のうえからではあるが、こりこりと指でいじめる。

 すぐに海堂はだらしなく眉を下げて、気持ち良さそうに声をあげはじめた。



 そのときだった、



がらっ




「わ!桃城!また喧嘩してんのかよ!店の前で迷惑だぞ!」

 店の扉が開く音と、クラスメイトの驚いた声が同時に聞こえて、
俺と海堂は二人してびくっと我に返った。


 一瞬にして現実に戻された俺たちは、顔を見合わせて
お互いに顔を赤くした。



 幸いにも、クラスメイトは本気で俺たちが喧嘩していると思ってくれているようで、
俺たちがそこでエロいことをしようとしていたことなんて気づいてもいなかった。

 
 海堂は罰が悪そうに店内に入っていって、注文していたビールがきていることに気づいて
浴びるように酒を飲み始め、再び飲み会のモードに戻っていった。




 ただ、俺にはむずむずした感じが残り、
久々の同級生との話よりか、
今すぐに、海堂を抱き込んでめちゃくちゃにすることしか考えられなくなった。

そうとなれば、俺はこれ以上酒を飲んで入られない。


 これ以上のんだらたつもんも、たたなくなるし。


海堂を見つめ俺はにやりと笑った。



 酒飲んでふにゃふにゃの海堂の体は、いつもより気持ちいいことを知っている。
それを思えば、今のこの待て。の状況だって悪くない










 初めて見たときから好きでした、って所謂一目惚れってやつだ。
海堂を好きになったのは、一目惚れじゃないけど、
別にいま、俺が海堂を好きなのは絶対であって、

真実に変わりないんだから、
 好きになり方なんてないんだな、なんてのが
俺の今まで生きてたうちの教訓の一つだったりする。




2012 4月23日

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ