dream
□丸井ブン太
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俺とこいつとの共通点と言ったら、「付き合ってること」くらいしかない。
あとは、こいつは女で俺は男、俺は甘いものバクバク食べるけどこいつは何故かあんまりケーキ屋行っても食べなくて、こいつはクラスでは静かだけど俺はうるさいし、俺は運動なら苦手なものなんてねーけどこいつは鈍臭いし、こいつは邦楽が好きだけど俺は洋楽が好きだ。
ってな具合で、こいつとの共通点は見事になにもない。いっそ潔いくらいに、だ。
だから以前、当の俺がつまらなかったから、こいつに付き合っていて楽しいかと尋ねたことがある。
それから返ってきたのは「うん。」と言う他になんの付け足しも無いただ一度だけの肯定と、柔らかい笑顔。
ちょうど、今隣で見せる安らかな寝顔のような柔らかい表情。
ぶっちゃけ、あの時「正直つまらない」とか「え、どうしたの急に?」とかそれ以外のこと答えられたら別れようと思ってた。実際、喉元まで出かかってた。今だって、機会があればと、いつでもいつでも。
「……なぁ、」
「…………」
「別れよ」
「…………」
だけど結局、本人の目を見て言う気になれないのはなんでだ。別れようと口に出しながら、寝ているこいつの髪を愛おしむように撫でてしまっている矛盾。
「…こんなつまんないヤツ、」
そう罵りながらキスをした。
好きだからじゃなくてシャンプーの香りに少しだけ欲情したから抱きしめる腕に力を込めた。何度も言うけど、好きだからじゃ、なくて。
「………ン…、丸井くん…?」
「なんだよ、起きんなバーカ」
「ごめんね」
「……しらねー」
「あ、あのね、丸井くん」
「……なんだよ」
「すき、だよ」
生憎さよならがきこえなかったので
(今のこいつの顔見たら、何故かさっきの言葉が聞こえてなくてよかったと、心から思った)(理由は、わからないけど)
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