story

□駆け引きはいつだって
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いつだって私は敵わないのだ。

我が儘で寂しがり屋で、まるで子供みたいなこの男に。



ふと背中に重みを感じて振り向くと、視界に銀髪の天パが映った。

さっきまで向かいのソファーでジャンプを読んでいたハズの銀ちゃんだった。

「……何アルか。」

「…………。」

背中合わせのまま背後の人物に問いかけるも、返事はない。

それを気にせずに再びテレビに視線を戻すと、今度は背後でモゾモゾと動く気配がして。

かと思うと、いきなり後ろから抱きすくめられ、私の体は銀ちゃんの腕の中にスッポリと納まっていた。

だけど、それでも私は銀ちゃんの方に顔を向けずに、頑なに視線をテレビの画面に固定した。

そんな私の態度が気に食わなかったのか、銀ちゃんは無言でギュウギュウと抱きしめる腕に力を込めてくる。

(…今さら遅いんダヨ。)

内心そう悪態をつきながらも、決して口には出さないし、そんな素振りを見せもしない。

至って平静を装って。

間違ってもそれに応えてなんかやらない。

だってこれは、仕返しなんだから。

 
今日もいつもの如く依頼はなく、朝からずっと暇を持て余していた。

一度、外に遊びに行こうかと思ったけれど、あいにく今日は日差しが強い。

傘を差して遊んでもすぐにダウンするのが目に見えていたので、仕方なく今日一日は万事屋でじっとしていることにした。

だけど、新八はお通ちゃんのイベントに行ってて今日は休みだし、定春は和室で昼寝中。

ここの主はと言えば、ソファーに仰向けに寝転がりながらジャンプに熱中していて。

(……つまんないネ。)

朝からもう何回そう思ったかしれない。

私は銀ちゃんにほったらかしにされて拗ねていた。

さっきだって昼ごはんを食べた後、私の気づかない内に銀ちゃんは一人で出かけていて。

それだけでも置いてきぼりにされて腹が立ったというのに、ようやく帰ってきたかと思えば、私には目もくれないで買ってきたジャンプを読み始めて。

どれだけ声をかけても返ってくるのは生返事ばかり。

せっかくの2人きりなのに。

少しぐらい構ってくれたっていいじゃないか。

今度はそう声に出さずに恨めしげに視線を送ってみたけど、やっぱり何の反応もなくて。

殴りとばしてやろうかと思ったのは一瞬で、ジャンプに釘付けで私の方をチラリとも見ようとしない銀ちゃんに、何だか怒り以上に寂しさを覚えた。

(銀ちゃんのバカ…)

私は唇を尖らせながら、仕方なくテレビの電源ボタンに手を伸ばした。

――そして、今に至る。
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