story
□どんなキミも
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目が覚めたら銀ちゃんの腕の中にいた。
「……アレ?」
何で私、銀ちゃんと一緒に布団で寝てるんだろう。
寝る時はちゃんと押し入れにいたハズなのに。
一瞬まだ夢でも見てるのかと思い、パチパチと数回目を瞬いた。
でもやっぱり間違いない。
ここは和室だ。
規則正しい寝息をたてて眠っている銀ちゃんの顔を下から見上げながら、寝る前のことを思い出そうともう一度そっと目を閉じてみた。
『お前なんかもう知らねェかんな!』
『それはこっちのセリフアル! 』
ああ、そうだ。
昨日の夜、確か銀ちゃんとケンカしたんだっけ。
ケンカするのはいつもの事だし、大抵が些細なことが原因だ。
実際いつも後になると、何が原因でケンカしたのかお互い忘れてしまうくらいだし。
昨日の夜だってちょっとしたことで言い合いになって、銀ちゃんはそのまま飲みに出かけて。
私もそのまま押し入れに引っ込んで寝た、ハズ。
なのに、今私は和室にひかれた布団の中で、銀ちゃんに抱きしめられる形で横になっている。
(…何で?)
部屋を見渡してみても真っ暗で。
今が何時かわからないけど、おそらくまだ夜も明けていないのだろう。
銀ちゃんが出ていったのは、確かドラマが終わった10時過ぎぐらいだったと思う。
いつもならそれぐらいの時間に飲みに出ると、大体朝まで帰ってこないのに。
今日は早めに切り上げてきたのだろうか。
珍しいこともあるものだ。
まだ完全に覚醒しきっていない頭でそんな事をぼんやり考えていると、ふとある事に気付いた。
いつも銀ちゃんが飲んで帰ってくると、思わず顔をしかめたくなるほどお酒くさい。
だけど、今の銀ちゃんからはそのお酒の匂いが全くしない。
少しも飲まずに帰ってきたのだろうか?
じゃあ一体、何しに出かけたんだろう?
何よりその前に。
そもそも、何で私は今こうして銀ちゃんに抱きしめられてるのだろう。
しかもガッチリと腕の中に閉じ込められていて、さっきから身動き一つとれない。
何とか体勢をかえようと身じろぐと、銀ちゃんの腕の力がますます強くなった。
まるで絶対に離すまいとするかのように。
その瞬間、何で押し入れで寝てた私が銀ちゃんの腕の中にいたのかがわかった気がした。
「…銀ちゃんの寂しがり屋。」