story

□彼と彼女の恋模様
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昼休み。

校内放送で銀八に呼び出された神楽と新八は国語準備室の前に来ていた。

「失礼しまーす。」

「銀ちゃん、来たアルヨ。」

中に入ると部屋中にタバコの煙が充満しており思わず咽せそうになる。

「おう、今日の日直は新八と神楽か。」

「何の用ですか、先生。」

新八が煙たさに顔を顰めながら尋ねた。

「あー、お前らコレちょっと手伝え。」

そう言って2人が手渡されたのはホッチキス。

「何するアルか?」

「そこにプリント並べてあんだろ。端から順番に1枚ずつ取ってソイツでとじていってくれ。」

「えー、何で私達がそんな事しなきゃならないアルか。昼休み終わっちゃうネ!」

「うるせェな。オメーら日直なんだから手伝えよ。俺だって本当はこんなダリー事したくねェよ。」

「コレ、何なんですか?」

ソファーの前に置いてある机にはプリントの束がびっしりと並べられている。

「今日のロングホームルームで使う資料だ。面倒くせェけどよ、あのバカ校長がちゃんと進路指導しろってうるせェんだよ。」

「イヤ、面倒くさいってそれがアンタの仕事でしょうが…」

銀八の発言に、こんなダメ教師が自分達の進路を指導するのかと思うと新八は一抹の不安を感じずにはいられなかった。

しかし結局は、新八を含めた3Zの生徒は皆、何だかんだ言っても銀八を信頼しているのだ。

「とにかく頼むわ。」

「ハァ…もう、しょうがないアルなー。」

腰に手を当てて盛大にため息をつきながらも、早速ソファーに座ってプリントを取り始めた神楽を見て、新八は苦笑しながら自分もその隣に腰を下ろした。

「そう言えばよォ、神楽は卒業したらどうすんだ?」

「え…?」

神楽は手を止め、向かいで気だるそうにパチパチとホッチキスで資料を留めている銀八を見やった。

「イヤ、お前って一応留学生じゃん?どうすんのかなって思ってよ。中国に帰んのか?」

「……帰らないアル。」

「じゃあ、神楽ちゃんコッチの大学に進むの?」

新八の問いに真っ先に銀八がかぶりを振って答える。

「オイオイ、お前そりゃ無理だって。コイツの頭じゃあ大学どころか卒業もできるかも怪しいもんだぜ?」

フーッと白い煙を吐き出しながら到底教師とは思えないような発言をする銀八に、神楽は口を尖らせて抗議した。

「別に大学行くなんて一言も言ってないアル!」

「じゃあどうすんだよ?まさかお前働く気か?」

タバコを口に銜えながら片眉を上げる。

「…それは…わからないアルけど…でも中国には帰らないネ。」

「………。」

銀八は小さな声で俯いた神楽に一瞬訝しげな視線を向けたが、それ以上は追及せずにまた視線を元に戻した。

「まぁ、とにかくまずはちゃんと卒業するこった。高校さえちゃんと卒業してりゃ…」

「私…別に卒業できなくてもいいアル。」

「……あ?」

「留年しても構わないネ。」

「…ハァ、お前何言ってんの?冗談も休み休み言えって。」

今にも崩れ落ちそうな灰皿の吸い殻の山に短くなったタバコを押しつけながら、銀八はため息と共に白い煙を吐き出した。

「別に冗談じゃなんかじゃないネ。本気アル。」

「尚更ダメだっつーの。ってかさ、オメー自分の将来のことなんだからよ、もうちょっと真剣に考えたらどーよ?」

珍しくちゃんとした教師らしい銀八の発言に、新八が茶々を入れる。

「うわ、先生がそんな真面目な事言うなんて…熱でもあんじゃないっスか?」

「…殴るぞ、コノヤロー。」

ピクピクと青筋を立てながら新八を睨むと、銀八はまた神楽に視線を戻して続けた。

「とにかく今すぐ決めろって言ってんじゃねェんだから、いっぺんよく考えてみろよ。」

「…私、ちゃんと真剣に考えたネ。」

「…じゃあ何でそれが卒業しなくてもいいに繋がるんだよ?」

銀八の問いに神楽はスカートの裾をギュッと握りしめた。

「それはっ……まだ日本にいたいからヨ…」

「あん?日本にいたいなら別に留年なんかしなくてもいくらでも方法があんだろーが。大体なァ、お前…」

「…っじゃあ、どうすればいいネ!?」

銀八の言葉を遮り、神楽の声が準備室に響いた。

バッと勢いよく立ち上がった神楽を銀八は驚きながら見上げた。

「どうすればって、だからよ…」

「私がっ…卒業しなくてもいいって言ったのも、日本にいたいって言ったのも全部っ……全部銀ちゃんと離れたくなかったからアル!!」

「……へっ?」

間抜けな声がしたかと思うと、次に新八の目に映ったのは呆気にとられたような表情の銀八だった。

次いで神楽の方へ視線を移すと、表情は新八の位置からは隠れて見えないが、ギュッときつく握りしめられた拳が微かに震えていた。

「神楽ちゃん…」

「…オイオイ、神楽…」

「!」

新八がもう一度銀八に目を向けると、銀八はもういつもの表情に戻っていた。

「そりゃ、卒業して俺や3Zの奴らと離れんのが寂しいってのはわかるけどな…」

銀八は腕を組んでもっともらしくウンウンと頷きながら続ける。

「でも、お前ももう高3なんだから…」

「ちょ…先生、違いますって…」

「あ?何が違うん…」

「……いアルか。」

唸るように低い声で神楽が呟く。

「え?何だって?」

「……どこまで鈍いアルかって言ったんだヨ、この白髪天パがァァ!!」

「グハァッ!?」
  
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