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□dizzy
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本当にこれで良かったのか?

ほんの一瞬、そんな考えが頭の中を過って思わず動きを止めた。

「ぎんちゃ…?」

下から神楽が不思議そうに俺を見つめた。

その目は潤み、頬は上気して赤い。

艶めいた桜色の唇を舐めると、頬の赤みはさらに増した。

「…なんでもねェ。」

そう答えて、たった今浮かび上がった考えを振り払うように、俺は再び神楽の体を揺さぶり始めた。

目眩がしそうだった。

今自分が抱いてるのは妹だ。

血は繋がってはいない。

それでも仕事で滅多に帰ってこないハゲ親父に代わり、今日まで大事に大事に守ってきた。

――兄として。

少なくとも自分はそのつもりだった。

否、無理矢理そう思い込もうとしていた。

それが全くの無駄な努力だったと思い知らされるとは、昨日までの自分は夢にも思わなかっただろう。


「…んっ、あ、あっ…!」

いつも毒舌ばかり吐いている口からは、今まで聞いたことのない甘い声が絶え間なく漏れてくる。

「…ぎんちゃ、あっ、ぎ、ちゃ…!」

細い体を揺さぶる度、それに応えるかのように俺の名前を必死に紡ぐ唇に自分のそれを重ねる。

わずかな隙間から抉じ開けるように舌を入れて口を開かせ、神楽の小さな舌と絡めた。

涙に濡れた長い睫毛が綺麗だと思った。



ずっと好きだった、と神楽は言った。

自分を俺だけのものにしてほしい、と。

そう告げられた時、それこそ本当に目眩がした。

頭がクラクラして思考は全く役に立たない。

神楽を自分の部屋に招き入れた瞬間から必死に働かせていた理性ですらも。

自分を見上げてくる青い目とカチリと視線が合った瞬間、神楽をベッドに押し倒していた。

「…んっ、やぁ、ぎんちゃ…あつ…いア、ル……ああっ…!」

余裕なんてどこにもなくて。

「…な、んか…へんアル…!あっ、んん…私、へんになっちゃ…!」

初めての感覚に戸惑いながら素直な言葉を口にする神楽に、またどうしようもないくらいの愛しさが募った。

「神楽…っ」

耳元で名前を呼ぶと、神楽の中がビクリと収縮して、力なく俺の制服のシャツを握っていた指に力がこもった。

細く白い首筋を唇でたどりながら、一つまた一つと自分のものだという印を付けていく。

今日は久々にハゲが帰ってくる。
だけど、まだそれまで時間はある。

そう、今はまだ。

あと、もう少しは。

動きを速めると、甘く高い声が部屋に響いた。

「…あ、もっ、もうだめアル…!ん…っ、はぁ、あつ…て、とけそ…」

顔から汗が伝い、神楽の胸元に落ちる。

「…あっ、あっ、ぎんちゃん…!ん、すき…っ、だいす、きぃ…!」

うわ言のように好きと繰り返す唇に噛みつくように口付けた。

きっと俺の方がお前の何倍も大好きだ。




end.
 

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