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□こっちを向いて
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今朝から神楽があからさまに顔を背けて俺の方を見ようとしない。

話しかければ普通に答えは返ってくるが、その瞳に俺の姿が映ることは決してない。

何でだ。

何で俺を見ないんだ。

不自然すぎる神楽の行動を追及したいのに、もしはっきりと"嫌いだから"なんて言われたらと思うとどうしても躊躇ってしまう。

今はテレビに夢中になっているようだが、俺から神楽の視線を奪っているかと思うと、相手がテレビの中の人物だとしても嫉妬心が湧き上がってくる。

そして、さっきまで神楽の視線を1人で独占してたのは、洗濯物を干していたダメガネ…もとい新八。

イヤ、もうダメガネのまんまでいいか。

アイツは今から志村ダメガネに改名だ、ウン。


「人の名前を何勝手に改名してんだァァァ!!」

「うおっ!?いつの間に…ってか、人の心を勝手に読むなよテメー!」

「イヤ、アンタさっきから全部口に出てるんですけど。」

「マジでか。」


呆れた様子の新八は、どこぞのオカンよろしく割烹着を着て、手には菜箸が握られていた。

神楽が俺よりもこんなのを熱心に見つめていたと思うと、男として何だか情けなくて泣きそうになる。


「こんなので悪かったなコノヤロー…っていうか、また全部口から出てるんですけど…」

「…アレ?」

「ハァ…まぁ、いいですけどね。っていうか、神楽ちゃんが銀さんを見なかったのは別にわざとって訳じゃないですよ。」

「…新八、お前理由知ってんのか?」


朝からずっと頑に俺の方を見ようとしなかった神楽。


それには一体どんな理由が…


「ただの寝違えです。」


「……ハァァァ!?」



(こっちを向いて)
 

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