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□俺と先輩
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「飲むヨロシ。」
コトンと目の前に置かれたそれを思わず凝視する。
いちご牛乳が入った可愛いウサギ柄のグラス。
「え、コレって…」
「…何だヨ、別に毒とか入ってないアル。飲まないんだったら…」
「あー、待って待って!飲むっ!飲みますっ!!」
グラスを下げようとする先輩を慌てて制して、ピンク色の液体を一気に飲み干した。
ウン、うまい。
じゃなくて。
これは一体どういうことだろうか。
俺の好物を出してくれるなんて…イヤ、何よりもまず先輩が俺を家に入れてくれるなんて。
一目惚れしたその日から毎日のようにアタックしまくって、ようやく顔と名前を覚えてもらって。
朝は家まで先輩を迎えに行って(頼まれてないんだけど)、帰りも先輩の教室まで迎えに行って(これも頼まれてないんだけど)。
そうして今では、たまにうざそうな顔をされるけど、一緒に登下校するのが普通になった。
これも俺の努力の賜物。
だけど、もっと先輩と親密な関係になりたいっていうのが本音。
だって、健全な男子高校生ですから。
先輩が何で俺を家に呼んでくれたのかは分からないけど、俺がこのチャンスを逃す訳がないでしょ。
「先輩、あのっ…」
「今日お前をウチに呼んだのは、その…大事な話があるからネ。」
…んん?
これは…もしかしたらもしかするんじゃね?
だって見てみ?
先輩ちょっと顔赤いし。
さっきからチラチラ俺のコト見てるし。
「…先輩、大事な話って何ですか?」
「ウン…あの、実は私…お前のコトが…」
えっ、まさか本当に予想的中?
「…俺のコトが?」
「す…」
「す?」
「………アレ?」
気がつけば目の前にあったのは、先輩の恥じらった可愛い顔ではなく、見慣れた自分の部屋の天井。
聞こえてきたのは、先輩の愛の告白じゃなくて、部屋中に鳴り響く携帯の着信音。
「……え、何コレ?まさか夢オチ?」
誰か嘘だと言ってくれ。
「もしもし…」
『遅いっ!さっさと出ろヨ!』
「せ、先輩っ!?」
『お前、まだ寝てたアルか?』
「…え、だって今日土曜だし…」
『今から20分以内に私の家に来るヨロシ。』
「は?20分って…今起きたばっかだし無理…」
『もし来れたら、今日デートしてやるネ。前に観たいって言ってた映画のチケット、知り合いに2枚貰ったアル。』
「え…」
『その代わり1分でも遅れたら、誰か違う人誘って行くからナ。』
ブチッ ツー ツー
「マ、マジでかァ!?」
(俺と先輩 その2)