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□最高の殺し文句
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ってか、野郎の部屋で何でそんな簡単に寝れるんだよ。
しかも2人きりよ?
一応さぁ、俺だって健全な男の子な訳だし?
好きな女が目の前でこんな無防備で寝てたら、そりゃ触りたくなるのが当然だろ?
艶やかな朱色の髪を撫でながら、頭の中で必死に言い訳をする。
それでも、一度触れてしまえばその手をまた離してしまうなんてできなくて。
そういえば、よくよく考えてみたら神楽の髪に触るのって初めてかもしれない。
神楽は昔からよく俺の髪に触って遊んだりしてたけど。
羨ましすぎるくらいサラサラな髪に指を絡めて口付けた。
柔らかな甘い香りにクラクラする。
今にも理性が崩れてしまいそうなのを何とかグッと堪えるが、それでも視線は神楽の寝顔に釘付けで。
無意識に少しずつ神楽の唇に自分の唇が近づいていく。
あと少し。
あと、もう少し。
不意に桜色の小さな唇が開かれた。
「 」
…オイオイ、それって反則だろ。
神楽の口から出た言葉に思わず赤面する。
俺の、名前。
イヤ、名前なんてそれこそ今まで数えきれないくらい呼ばれてきたけど。
『銀ちゃん』
神楽しか言わない俺の呼び名。
それをあんな安心しきった寝顔で、可愛らしい声で言うもんだから。
なんて言うか…不意打ちっつーの?
ほんと狙ってんじゃねェかってくらい。
「…可愛すぎんだよ、コノヤロー。」
そのまま唇の代わりに額にキスをして、俺の胸にそっと抱き寄せる。
腕の中を見下ろせば、相変わらず幸せそうな神楽の寝顔。
あぁ、やっぱりコイツには敵わない。
ちょうど映画の中の男女も抱きしめあっていて、テレビ画面に静かな曲と一緒にエンドロールが流れ始める。
このまま神楽と昼寝ってのも悪くないかもしれない。
そう思うと急に眠くなってきて。
朱色の髪にもう一度口付け、そのまま俺も目を閉じて睡魔に身を委ねた。
目を覚ましたら、きっと神楽は顔を真っ赤にして驚くにちがいない。
そしたら少しからかってやろう。
そんなことを考えながら。
end.