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□待ち続ける
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甘えたいのに甘えられない。

素直になりたいのに素直になれない。

自分でも損な性格だと思う。

だけど今までずっとこうしてきたから、今さら簡単に変われる訳もなくて。



頬杖をつきながら、ボンヤリと教室の前の方へと視線を向けた。

そこで繰り広げられているのは、もう3Zではお馴染みの光景。

「先生!私、先生の為にお弁当作ってきたんです!ぜひ食べて下さいっ!!」

「弁当って…お前コレ、ご飯の上に納豆のっけてるだけじゃねーか!ってゆーか、お前なんか手が納豆臭いんだけど!寄んないでくれる!?」

端から見れば授業中とは思えないほどの騒がしい教室。

だけど当の3Zの生徒にとっては、こんなのは日常茶飯事で。

誰も気にも留めず、みんなが好き勝手に思い思いの時間を過ごしている。

と言うより、このクラスで真面目に授業をしてる方が珍しいくらいだ。

「私が食べさせてあげますね!ハイ先生、アーン!」

「いらねェって言ってんだろ!!つーか、そこ口じゃなくて鼻だからァァ!」

先生とさっちゃんのやり取りをボーッと眺める。

さっきから胸がチクチクと痛んでしょうがない。

だけど。

私はわざとそれに気づかないフリをして、その代わりにもう今日何度目になるかもわからないため息をついた。
 

「ほんとあの人達も懲りずによくやるわね…」

「…そう、アルナ。」

アネゴの呆れた声に力なく相づちを打ちながら、また小さくため息をつく。

すると、アネゴが振り返って心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「…神楽ちゃん、元気ないわね。どうかしたの?」

「えっ、そんなことないアル!私ならホラ、いつも通り元気アルヨ?」

慌てて何でもないように明るく振る舞う。

「そう?それならいいんだけど…でも、もし何か悩み事とかあるなら相談に乗るわよ?」

「アリガトネ、アネゴ。でも本当に大丈夫アル。」

「お妙さんっ!悩み事があるんですけど、相談に乗ってもらえますかっ!?」

声のした方に顔を向けると、いつの間にそこにいたのか、私達の前にゴリが鼻息荒く立っていた。

「実は俺、ある女性に恋をしてるんです。その女性というのは…」

そう言ってゴリは顔を赤らめながらチラチラとアネゴに意味ありげな視線を送る。

「アラ、こんな所にゴリラがいるわ。動物園から逃げ出してきたのかしら。」

だけど、アネゴは冷やかな笑みでそれを一蹴し、パキポキと指の骨を鳴らし始めた。

「お、お妙さん、あの…」

「まぁ、しかもこのゴリラしゃべるわ。もしかしたら魔物の類いかもしれないわね。早く退治しなきゃ!」

ゴリが青ざめながら後退るも時すでに遅く、次の瞬間にはアネゴの強烈な右ストレートが見事に顔面に決まっていた。

そんなアネゴとゴリのやり取りもまた、3Zではお馴染みのもので。

もう何度となく繰り返されているソレに呆れる反面、さっちゃんやゴリのように自分の気持ちを素直に伝えられる事が羨ましく思う。

私もあんな風に素直になれたら。

怒号や悲鳴が飛び交う中でそんな事をボンヤリ考えながら、私は人知れずもう一度ため息をついて視線を窓の外へと移した。
  
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