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□愛しくて愛しくて。
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ざわめく昼休みの校内。

教室や廊下からは、いつものように生徒の笑い声や楽しそうな話し声が聞こえてくる。

そのざわめきを遠くに聞きながら、銀髪の少年が一人、屋上への階段を上がっていた。

その顔には少し疲れが見える。

重い鉄のドアを開けて屋上に出ると、目の前に澄んだ青空が広がり、銀時は思わずホッと息をついた。
 


今朝はいつもと同じようで、いつもと全く違っていた。

小さい頃からずっと好きだった幼なじみに、銀時が自分の想いを伝えたのはつい2日前の事。

初めは避けられていたけれど。

電話で彼女も自分のことが好きだと言ってくれた時は嬉しくて嬉しくて。

そのまま一晩中2人で他愛もない話をしたりした。

お互い朝が来るのを待ち遠しく思いながら。

そして、いつもと同じようでいつもと違う今朝。

そこには、"幼なじみ"から"彼氏と彼女"に変わった2人がいた。

昨日の事があってか、学校に着くなり周りから好奇や嫉妬の目を向けられたが、あんなに大勢が見てる前で告白したのだから無理はないかと、銀時はさほど気にしていなかった。

確かに、あの告白は今までの自分からは想像もつかない行動だったかもしれないが、その結果こうして神楽と想いが通じ合うことができた訳で何一つ後悔はない。

ただ、教室に入ってすぐにニヤニヤ顔で自分に声をかけてきたメガネは、何かムカついたのでとりあえず殴っておいたが。

だが、午前の授業も終わって昼休みになった頃には、銀時もいい加減うんざりするようになっていた。

とにかくどこへ行くにも視線がついて回るのだ。

銀時は素早く昼食を済ませると、人目を避けたくて屋上に足を向けたのだった。


「銀ちゃん?」

聞き慣れた声の方へと目を向けると、そこには愛しい少女の姿。

途端に胸がフッと軽くなる。

すぐにでも駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られたが、それを何とか抑えていつもの緩い足取りで神楽に近寄る。

「…お姉さん、こんな所に一人ですか?」

冗談混じりにそう言ってみると、神楽が少し照れたように頬を膨らませながら答えた。

「…だって、どこ行ってもみんなが私のことニヤニヤしながら見てくるから落ち着かないネ!弁当くらいゆっくり食べたかったアル。」

そう言う神楽の横には、もうすでに中身が空であろう弁当箱と大量の酢昆布の空き箱が転がっていた。

「…あー、俺も何か落ち着かなくてよ。」

神楽らしいなと思わず吹き出しそうになるのを堪えて、銀時はボリボリと頭を掻きながら神楽の隣に腰を下ろした。
 
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