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□真夜中の電話
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時刻はもうすぐ0時。

「…ハァ、どうしよう…」

神楽は携帯を握りしめて大きくため息をついた。

もうかれこれ数十分は携帯の画面とにらみ合いが続いているだろうか。

発信ボタンに指を伸ばしては、また引っ込めるの繰り返し。

「…やっぱり無理アル。」

とうとう諦めたように携帯をベッドに放り投げ、そのまま自分もゴロンと仰向けに寝転がった。

目を閉じると頭に思い浮かんでくるのは幼なじみの銀髪の少年。

「……銀ちゃん…。」

名前を呟くだけで胸がじんわりと熱くなり、鼓動が少し速くなる。
 
こんな事は初めてだ。
 
神楽は目を閉じたまま、もう一度小さくその名前を呟いた。

「…銀ちゃん。」





高校に入って神楽は急にモテるようになった。

もちろんよく知りもしない相手と付き合える訳もないので、全て断ってはいたが。

だけど告白される度に、自分のどこがいいのだろうと神楽は不思議に思っていた。

一度その事を親友の妙に話してみると、妙は一瞬少し驚いたような表情をして、すぐに可笑しそうに笑った。

「アラ、だって神楽ちゃんとっても可愛いもの。」

「えー?そんな訳ないネ。からかわないでヨ。」

ますます分からないというように首を傾げる神楽を見て、妙は今度は困ったように笑っていた。

「フフッ、これじゃ銀さんも大変ね…。」

最も、妙のそんな小さな呟きは神楽の耳に入ってはいなかったが。

だから、まさか銀時から告白されるなんて思ってもみなかった。

ビックリした。

そう、一言で言うならビックリしたのだ。

最初はまだその言葉の意味をちゃんと理解できなくて。

『幼なじみとしてじゃなくて一人の男として…』

頭の中で何度も何度もその言葉を繰り返す。

『お前が好きだ。』

知らず知らずの内に火照っていく顔と、だんだん速くなっていく鼓動に、気持ちだけが追いつかなくて。

気がつけばその場から逃げ出していた。
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